第14話 王宮からの依頼

公的ギルドの会議室で、王子夫妻とエルマイスター家が揃って話し合いをしていた。


「王宮からアタル殿に正式な依頼がありました」


第2王子のジョルジュが書類の束を出して話した。


「じゃが、それはどの程度の強制力のある依頼なのじゃ?」


ハロルドはこれまでもアタルにお願いはしても強制はしていない。王宮からの正式な依頼となれば、実質的な強制であり、断れば反逆罪になる場合もある。


「ハロルドの心配はわかる。私もその点は注意するように陛下に進言してある。今回は正式な依頼だが、お願いというたぐいのものだ」


ハロルドは安心した表情を見せる。しかし、不思議そうに呟いた。


「それなら、これまでと変わらぬではないかのぉ」


ハロルドの呟きにジョルジュが答えるように話す。


「王宮としては、アタル殿の機嫌を損ねるのは得策でないと判断したようだ。ただ、施政としては気分次第で魔道具を提供されたり、回収されたりされては困るということだろう。契約できることがあれば契約して、国家運営にきちんと取り込みたいということだ」


ハロルドは大きく頷いている。その事を一番身に染みているのがハロルドだからだろう。


「それでは国からの依頼をアタルが断っても問題ないということね?」


レベッカが尋ねるとジョルジュは苦笑して答えた。


「ははは、国がアタル殿に何かできると思いますか。神像さえも創りだす彼に何ができると思います。それこそ天罰が国に落ちそうですよ」


ジョルジュの話に全員が苦笑を浮かべる。


「国もアタルへの借金地獄に落ちることになるのぉ」


ハロルドの話にレベッカが頷く。それを見たジョルジュは心配そうに尋ねた。


「そ、それほど高額な金額になりますか?」


「う~ん、アタルが来る前だったら、国宝級と言ってもいいぐらいの魔道具よ。そう考えると破格の安さといえるわ。でも次々と新しい魔道具が必要になるのよ。いくらお金があっても足りないわよ!」


ジョルジュの質問にレベッカが答えた。


「まあ、アタルも作れる数には限界もあるじゃろう。素材も簡単に手に入るものばかりではないはずじゃ。すぐに国の望むような数を作るのは無理のはずだ」


ハロルドの話にジョルジュも頷く。


「要するに、資金と優先度を考えないとダメだということですね。まずはそれについて相談させて下さい」


ジョルジュは全員が頷くのを確認すると、具体的な話を始めるのであった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



ジョルジュは手に持っていた書類を全員に渡した。


「王宮が求める魔道具というか依頼ですね。上に書いてあるほど優先度が高いと考えてください」


ハロルドは書類を受け取って読むと話した。


「やはり、塩の確保ということじゃな。しかし、これは前にも話したはずじゃが、現状ではアタルが確約できることはないはずじゃがのぅ」


まだどれくらいの量の塩が安定供給できるか不明なことは、王宮にも伝わってはずである。ハロルドは確認の意味も含めて話した。


「それは王宮も理解しています。ただもう少し詳細を詰めて、現状で契約できることがあればしたいということです。例えば、王宮にある備蓄分を全量買い取ってもらい、それと同量の塩の購入権を契約したいということです」


「ああ、備蓄分を買い取ってもらい、当面の費用に充てる思惑というわけじゃな。それに備蓄倉庫も空いて管理の手間も無くなることも狙っているところかのぉ」


エルマイスターでは、すでに備蓄分は公的ギルドに買い取ってもらい、そういったメリットを享受しているのだ。


「はい、だからその買取や販売をする魔道具の提供を、契約したいということですね」


ジョルジュは笑顔で答えた。


「はははは、それは上手いこと考えたのぉ。王宮は大した費用をかけることなく、資金を手にして経費が抑えられるということじゃ。それくらいならアタルも、それほど抵抗なく契約をするじゃろう。手頃な実績というところじゃな」


ハロルドの話にジョルジュも笑顔で頷いた。


「もちろん安定供給の為の検証もお願いしたいと思っています。塩の確保ができるだけで、国の状況が良くなるのは間違いないですから」


書類を見ながら全員で優先度や、どういった契約が良いのか話し合いを続けるのであった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



そんな話し合いをしているとは知らない私は、自分にこれほど様々な属性(性癖)を持っていたに戸惑っていた。


クレアは同年代の恋人属性というか、男勝りの強気な同級生が時折見せる女性の可愛さを見せる姿が私を刺激する。くっころ属性もあると思うし、ひ弱な俺としては頼れる彼女と夜の……ゲフン、ギャップも大いに私を刺激する。


ラナは姉属性だろう。なんか包み込むような年上のお姉さん的な雰囲気があり、ダメな自分を優しくしかってくれる。時折見せるお姉さんの弱さも、私を刺激する。


レベッカ夫人は親戚の年上のエッチなお姉さん属性だろう。危険だと思いながらも、エッチな雰囲気に魅了され、男のさがを刺激する。禁断の関係というのも私の本能を揺さぶってくるのだ。


そして今問題になっているのはケモナー属性である。


確かに地球でも動物を見れば普通に可愛いと感じることはあった。でもそれは、衝動を抑えるのが難しいほどではなかったはずだ。


何とかしないと……。


相手は動物ではなく、子供といえども人である。地球でも子供が相手でもお尻を触るのは褒められた行為ではないし、過剰に触れば変態と言われても仕方のない行為だ。


頭を撫でる時にケモミミを触る行為も微妙だ……。


頭を撫でる行為は、それほど妻たちも警戒していない。過剰でなければ注意はされない。でも、頭を撫でるついでに耳を触る行為は、地球でも微妙な気がする。


ただ、我慢しようとすればするほど、右手の悪魔ケモナーが暴走しそうになる。


だからイーナさんの存在は危険なのだ。彼女は私の隠された属性を刺激する存在であり、ケモナー属性と妹属性、オッパイ属性と揃っているのだ。


オッパイ属性は妻たちやレベッカ夫人で消化できる。だが妹属性は微妙だ。イーナさんは恋人にできる年下の女の子という、妻たちやレベッカ夫人には無い要素を持っているのだ。

救いは、妹的存在のシア達やシャル達がいることだ。彼女たちは現状では完全な妹ポジションでしかない。でも、妹要素を微妙に消化しているのである。


だがケモナー属性が問題である。これまで変な意味ではないが、孤児院の子供たちで、ある程度ケモナー属性は消化していたのだ。それができなくなって破裂寸前のケモナー属性の前にイーナさんが現れてしまったのだ。


自制心の強い私はその対策を考え、準備を進めていた。


「よし、出来上がった!」


目の前には様々な獣人を参考にして作った、ケモミミカチューシャが並んでいる。


こ、これを、夜の、ゲフン、ゲフン……。ラナやクレア、そしてレベッカ夫人に使ってもらえば完璧だろう。



   ◇   ◇   ◇   ◇



公的ギルド会議室に呼ばれたアタルは、また何かやって叱られるのかとドキドキしていた。


「王宮は正式にアタル殿と契約したと思っています。無理なことはお願いするつもりはありませんが、検討してもらえませんか?」


ジョルジュ様は丁寧に話を始めた。


「そうですね。私もその事についてはそろそろ具体的に考える必要があると思っていました」


説教ではなかったのでホッとして答えた。


「それは良かった! 少し検討した内容を見てもらえますか?」


ジョルジュ様は嬉しそうに書類を出してきた。それを受取り、内容を確認すると答える。


「う~ん、これは私の考えと合いませんねぇ」


「そ、それはどこですか!? できるだけアタル殿が納得できるように手直しします!」


私の答えを聞いて、焦ったようにジョルジュさんが話した。


「いえ、細かな内容というより、私は王宮と契約するつもりがないのです」


「「「えっ!」」」


私以外の全員が驚いていたが、私はその反応こそ不思議に思うのであった。

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