第42話 結 婚
レベッカ夫人の行動を、少し間をおいてエマさんが止めてくれた。
エマさんを見ると誇らしげな笑顔に、含みのある感じがする。
もしかして、私の微妙な男心を考えてわざと少し間をおいて止めに入ったのだろうか?
くっ、優秀だが優秀じゃない!
これで私の銃が暴発しそうでなければ褒めていた。しかし、その事を分かっていないみたいだ。
俺がエマさんを睨みつけると、エマさんはそれに気が付き戸惑った表情でセバスさんを見た。
セバスさんも良くやったとエマさんを見ていたのだが、俺がエマさんを睨んでいるので不思議そうにしている。
ぼ、暴発しなくて良かったぁ~。
心の中で胸を撫で下ろすのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
レベッカ夫人は罰解除のお礼に来たのだが、クレアとラナを完璧に仕上げると言って戻って行った。
それからハロルド様達に屋敷を案内し、途中で昼を軽く食べて、午後3時には二人の準備が出来たと連絡が来る。
早すぎると思ったが、自分の銃の事を思い出して、急いで準備をする。
私の服装はシンプルな黒の礼服で良いかと思ったのだが、クレアとラナに見せると大反対されてしまった。
結局、ハロルド様の礼服を参考に白系のスーツを作り、着ることになったのだ。
急いで着替えると、エマさんの案内で1階の玄関ホールに向かうのだった
◇ ◇ ◇ ◇
1階の玄関ホールに着くと、ハロルド様達と子供達、メイドまで全員揃って階段の下に2列で並んでいた。
私はその列の真ん中に立たされると、全員が拍手を始める。
その拍手が合図だったのか、階段の上にクレアとラナが姿を現す。
真っ白なウエディングドレスが眩しいほど輝き、二人の美しさを倍増させている。
自分の仕事に喜びながらも、ふたりの姿から目が離せない。
ゆっくりと彼女たちが階段を降り始めると、その後ろからレベッカ夫人が派手で色っぽいドレスで姿を現し降りてくる。
何でやねん!
まるで主役のように降りてくるレベッカ夫人に、心の中で突っ込みを入れてしまったが、私も階段を上り、階段の途中で二人を迎える。
二人のあまりの美しさに、私は感動して目に涙を溜め、二人を娶る幸せに胸がいっぱいになる。
そんな私を見て二人も目に涙を溜めるのであった。
「三人共並んでこちらを向きなさい」
レベッカ夫人が厳かな雰囲気で言った。
えっ、これがこの世界の儀式なの!?
クレアとラナは私の横にレベッカ夫人の方を向いて、両脇から私と腕を組んだ。
三人揃ってレベッカ夫人を見上げると、レベッカ夫人が話始める。
「アタル、クレア、ラナ、三人はこれから夫婦として協力し合い、幸せな家庭を築くことを誓いますか?」
「「「はい」」」
ちょっと日本的!!!
思わず返事をしたが、驚いてしまう。
「三人で協力しこの世界の発展に寄与することを、この世界の神々と主神ノバ様に誓いますか?」
「「「はい」」」
世界の発展? 主神ノバ様! 神々に誓う!?
「この三人を今この時を持って夫婦と認め、神々の寵愛と祝福を与える」
レベッカ夫人がそう宣言すると、頭上から輝くような光が三人に降り注いだ。その光を受けたレベッカ夫人の顔が、生命の女神に見えた気がする。
この宣言を聞いた参列者は、拍手で祝福してくれたが、頭上から降り注ぐ光は見えていないようだった。
気にしたらダメだ!
私達三人は振り返ると、一緒に階段を降りる。
下まで降りて来ると全員が祝福?の言葉を述べてくれる。
「ミュウも早くアタルの嫁になるぅ~」
「キティもなるぅ~」
「あなた達の前に私達が先でしょ!」
シアがフォミとカティ、それにシャルの代表者のように話す。
「「え~!」」
「アタルお兄ちゃんは、胸が大きくないとお嫁にしてくれないのよ。私達もしっかり仕事をしてたくさんご飯を食べて大きくするのよ!」
シャルちゃん、誰がそんな事を言ったのかなぁ?
思いっきり否定したいが、クレアとラナを見ると言葉が出てこなかった。
「レベッカ、儂はあんな結婚の儀式は見たことないのぅ。しかし、あの夫婦の宣言は最高じゃった。ガハハハハ!」
ええっ、この世界にある儀式の一つだと……。
「わ、私も無意識にあんな言葉が……」
レベッカ夫人が戸惑ったように呟く。
あの神々が何かしたのだろう。
しかし、悪くない雰囲気だったので、許すことにするかぁ。
『ありがとうございます』
生命の女神から神託が届いた。
はい、神の介入が確定しましたぁ~。
『………』
無言の神託ってなに!!!
いろいろ言いたいことは有るし、家族の事は気になるが、神々も知り合った人々も心から祝福してくれているのは間違いないと思う。
この世界に来て良かったぁーーーーー!
◇ ◇ ◇ ◇
皆でダイニングに移動して食事会を始める。
「これで、アタルは我々の家族になったのじゃ。全員で三人を祝福し、これからもお互いに協力していこうではないか。乾杯じゃ!」
「「「乾杯!!」」」
家族は言い過ぎでは……。
確かにハロルド様は、クレアの後ろ盾として父親代わりになるのだから、間違いではないのか。
セバスさんもラナの父親代わりだし、孫が家の執事になったし……。
「アタル様、私と結婚する時も素敵な衣装を用意して頂けます」
アリスお嬢様が何気にトラップを仕掛けてきた気がする。
「アリスお嬢様がお嫁に行くときには、衣装をお贈りさせて頂きますよ」
「お嫁に行くではなく、お嫁に来ると言って下さらないのね……」
やはりトラップだったようだ。
「アタルさんはアリスでは不満なのかしら?」
レベッカ夫人が問いかけてくる。
質問はともかく、レベッカ夫人は色気が倍増していて、目のやり場に困る。
胸元の開いたドレスは、インナーの効果なのか、今にも胸が零れ落ちそうに見えるほどだ。
こ、今晩が過ぎれば、大丈夫のはずだ!
レベッカ夫人の胸元への視線を、必死で逸らして顔を見て話す。
「私も良い歳なので二十歳以上、どう頑張っても18歳以上でないと女性と見ることが出来ません。
それにこれほど素敵な妻を二人も娶ったばかりで、他の女性に目移りするのは出来ませんよ」
ハッキリとそう話すと、アリスお嬢様だけでなく、子供たちも残念そうな顔をしている。
ハロルド様はホッとした表情をしていて、レベッカ夫人は「18歳以上」と呟いている。
レベッカ夫人、お願いだから、変な事を考えないで下さい。
滾る衝動が抑えられなくて、何度もエマさんに早く終わるようにお願いしたが、さすがに不味いと説得されてしまうのであった。
食事会は夜9時ぐらいまで続いたが、子供たちもお腹いっぱいになり、疲れて眠そうにしていたのでお開きになってくれた。
地下通路を使って皆が帰るのを見送ったが、アリスお嬢様が眠そうにしていたので、レベッカ夫人と泊まって行くことになったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
夫婦の部屋のソファに、クレアとラナの二人に挟まれて座る。
ついにこの時が……。
大爆発寸前の思いを必死に隠して二人を見つめる。
「アタル、……旦那様、お願いがございます」
だ、旦那様ぁ~、素敵な響きだぁーーー!
にやけるのを我慢して返事をする。
「お、お願いとは何かな?」
えっ、そんなに深刻な話なの!?
ラナが真剣な表情で俺を見て来たので、内心で焦りまくる。
「メアベルが妊娠しています。その子が生まれるまでは、私は……、子供を作るのは待って貰えないでしょうか?」
えっ、えっ、それはどういう事?
まさか、行為自体ダメということぉーーー!
待って、待って、生活魔法の
「アタ、旦那様、私も年末にアリスお嬢さんを王都にお送りするまで子供は……」
えぇぇぇ、クレアさんもぉーーーーー!
「私達も年齢的に子供は早く欲しいです。でも、……どうかお願いします!」
「旦那様、お願いします!」
いやいやいや、子供は私も欲しいけど急いではいない。
いや、むしろ暫くは新婚生活を楽しみたい!
う、上手く説得するしかない!
「安心して欲しい。私も子供は欲しいが、焦っている訳でも無いから、三人で話し合ってゆっくりと考えて行こう」
何とか流れ的に良い感じで話せたと思う。
「「ありがとうございます!」」
両脇から抱きつかないでぇーーー!
本題の前に暴発しちゃうからぁ……。
何とか二人を宥めて話が出来るようになる。
本題を切り出そうとすると、先にラナが顔を真っ赤にして話をする。
「旦那様に頂いた指輪に、生活魔法がありましたので、
よがっだぁーーーーー!
説得しなくても、夜の夫婦生活は無問題だぁーーー!
クレアも顔を真っ赤にしている。
うんうん、そろそろ先に進みますかぁ!
「あ、あの、旦那様に頂いた、……着替えてきますね」
ラナがそう言うと二人が立ち上がろうとする。
よっしゃーーー!
えっ、あれっ、あっ!
二人が立ち上がったのを見て、あることを思い出す。
「ちょ、ちょっと待って!」
慌てて二人を引き止めると、不思議そうな顔をして二人が座り直す。
「え、え~と、わ、私は女性と、女性と経験がなくて、……最初から二人同時は……」
顔を真っ赤にして話すと、二人も真っ赤な顔をする。
「わ、私はどちらも同じように愛していて……、でも、でも初めてで二人は無理かと……、これが、ふ、普通なのですか?」
「私はそう言う事はあまり知らないから……」
クレアはあてにならないかぁ~。
「わ、私の聞いた話では、同時に複数娶った場合は、妻の順位で順番に……」
複数プレイは無いのかぁ。
安心する気持ちと、少し残念な気持ちになる。
「わ、私は順番を付けるつもりは無いけど、やはり同時は……」
「「……」」
二人とも無言になってしまった。
なんでもっと早く相談しなかったんだぁーーー!
相談するつもりだったのに、忘れていた自分が情けなくなる。
そこでラナが決意したように話をする。
「それでは、先に旦那様とお会いしたクレアに旦那様の初めてをお願いします。
でも、今日は、今日だけは三人で閨を共にさせて下さい。初めての旦那様の閨は二人で頂戴したいと思います」
えっ!
「それで良いのか?」
待って!
「はい、その代わりじっくりと報告をして頂きますよ」
待って、待ってぇーーー!
「そ、それは、恥ずかしいが報告するようにしよう」
「「ふふふっ、」」
いやぁーーー! 二人で微笑み合わないでぇーーー!
「それは、今晩は寝るだけという事かな?」
必死に冷静さを装いながら質問する。
「はい、今日は旦那様から頂いた下着は付けさせて頂きますが、夜着はパジャマというのでお願いできますか?」
で・き・ま・せんからぁーーーーー!
しかし、そんな事を言う度胸もなく、地獄の一夜を迎えるのだった。
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