Repetition Jonathan

気がつくと、墓地にたたずんでいた。

空が黒い雲に覆われているのに、この場所は妙に明るい。


正方形の墓石が、規則正しく、どこまでも数限りなく並んでいる。

ここにいても仕方がないと思い、気の向くまま歩いた。


等間隔に並ぶ黒い石のほとんどは苔むしていた。

時折り、真新しい墓石を見かけたが、表面に文字は彫られていなかった。


あてどなくまよい続けた果てに、一条の煙がかすかに見えた。


近づく途中で煙は消えてしまったが、出どころと思しき墓石に辿り着いた。

表面についている燃えかすのようなものを払うと、文字が出てきた。


名:ジョナサン XXXXXX

罰:繰り返し


読み終えた瞬間、生臭さが鼻を襲いはじめた。

なにが起きたのだ?

場を離れようとしたところで、足をすべらせて倒れた。


いつの間にか地面がぬかるんでいたようだが、目に見えてひどくなっていく。

空を見たが、雨は降っていない。


それぞれのぬかるみはやがて水たまりとなり、つながっていった。

波紋ひとつ立てずに、水量が増えていく。


墓石のうえに逃れたが、すぐに水没してしまった。

膝、腰、胸の順に、泥水の下へ消えて行く。

そして首まで迫ってきた時、足元の石がぐらつき、水の中へ体が落ちた。


暗闇の世界。

水が口に入った。

あまりの苦さに奥歯をかみしめる。


どうにか水上に頭を出して、あたりを見渡した。

一面が泥水で、それ以外はなにもなかった。


しばらくは平穏だったが、少しづつ水に流れが生じはじめた。

流れに身を任せていると、人が流れて来た。


見てみると、それは朽ち果てた母であった。

母の右腕をつかみ、すすり泣いた。


すると、他の遺体が吸い寄せられるように集まって来た。

家族、恋人、友人、会社の同僚・・・・・・。


顔見知りに囲まれ、妙な安心感に浸っていると、足を何物かにつかまれた。

強い力で引っ張られ、つかんでいた母の右腕ごと、泥水の中へ引き込まれた。

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