第28話 呼び出し

結局、文化祭が終わるまで、D組の裏に身を潜め、文化祭終了の合図と同時に自分の教室へ。


HRが終わった後、磯野さんが私に近づき切り出してきた。


「なんか他校の子が探してたけど彼氏?」


「…違うよ。 ただの同級生。 同じ中学だったんだ」


「会った?」


「う、うん。 ありがと」


苦笑いを浮かべながらそう言い切り、急いで学校を飛び出した。



帰宅後、自分の部屋に入ると、テーブルの上でスマホが点滅をしている。


スマホを手に取ると、何度も健太君がラインを送ってきていたことに気が付いた。


思わずため息をつきそうになると、スマホが手の中で震え、結衣子ちゃんからのラインを受信。


“お疲れ~! 明後日振替休日だし、明日、学校終わったら泊りに来れないかな? テスト近いから、一緒に勉強しよ”


結衣子ちゃんのお誘いをすぐに了承すると、今度は井口君からラインが来る。


“マルの写真送って”


『は? なんで?』


“最近会ってないから”


キャットタワーの最上段で眠っているマルの写真を送り、しばらくの間ラインを続けていた。



翌日は日曜だったけど、文化祭のため学校へ。


この日は午前中に男子バスケ部が招待試合に行ったため、ホッと胸を撫でおろしていた。


お客さんがほとんど来ないまま、店番をしていると、結衣子ちゃんが切り出してきた。


「若菜ちゃん、飲み物買いに行こ」


「うん。 いいよ~」


結衣子ちゃんと二人で飲み物を買いに行こうとすると、青山さんが切り出してくる。


「私もなんか飲みたい」


「何がいい?」


「なんでもいいよぉ」


私と青山さんの会話を聞き、結衣子ちゃんの表情が曇っていく。


結衣子ちゃんの表情を気にしながら自販機まで行き、お茶を買って教室に戻ると、青山さんはお礼を言いながら受け取り、お金を払ってきた。


『意外… 青山さん、こういうところちゃんとしてるんだ…』


そのまま磯野さんを交えた4人で話していたんだけど、美穂ちゃんと朋美ちゃんはこっちをチラチラ見てくるだけ。


店番を終え、結衣子ちゃんと二人で校内をうろうろしていると、美穂ちゃんと朋美ちゃんが私たちの前に立ち塞がった。


「ちょっといい?」


嫌な予感を感じつつも、二人の後を追いかけ、屋上の手前にある踊場へ。


踊り場につくと同時に、朋美ちゃんが切り出してきた。


「若菜さ、ちょっとは節操ある行動ができないの?」


「は?」


「この前の調理実習の時だって、井口君にあーんしちゃってるし、昨日だって井口君をD組に連れ込んでさぁ。 さんざん井口君のこと『ナンパ師』だのなんだのって言ってるけど、あんたがナンパしてんじゃん。 彼氏いるくせに何してんの?」


「あれは彼氏じゃ…」


「言い訳なんて聞きたくないから。 つーかさ、美穂の気持ち考えてあげなよ。 美穂は井口君のこと好きだったんだよ? なのに逆ナンするとかありえないんだけど」



『私に彼氏? 逆ナン? 美穂ちゃんが井口君を好きだった?』


朋美ちゃんの文句が止まらない中、身に覚えのないことや、初めて聞くことばかりを言われ、どんどん血の気が引いていくのを感じていた。


朋美ちゃんはマシンガンのように私を批判することばかりを言い切ると、スッキリしたように美穂ちゃんと二人でその場を後に。


二人が去ったあと、隣で聞いていた結衣子ちゃんは、不安そうに小声で切り出してきた。


「…若菜ちゃん」


「大丈夫だよ。 いきなり呼び出されてビックリしただけ」


「そっか… 今日、いっぱい話そうね」


苦笑いを浮かべる結衣子ちゃんとその場を後にし、朋美ちゃんから言われた言葉が頭を埋め尽くす中、教室に戻っていた。

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