第6話

「ん」


林ユーコは俺の顔を舐めるようにジロジロ見た。


「やめろっ...!」


俺は正体がバレる前に彼女の右手を振り払った。


それから、慌てて立ち上がり、


「弁償してくれなくていいから!」


俺は壊れた眼鏡を拾い上げて、

その場から逃げるように走り去った。


バレてなきゃいいけど...!


俺がアイドルで。

林ユーコがいつもコンサート会場に来てくれてて。


そこで、

俺の名前、アイドルの名前、


「シン!!」って叫んで、団扇とか叩いて

コンサートを盛り上げてくれてること、

俺はよく知ってる。


林ユーコが、他のメンバーの名前を叫んで

きゃーきゃー言うことはただの一度としてなかった。


つまり、林ユーコは。


俺を1番に推してて。


俺にぞっこんだということだが。


つい今しがたのアクシデントにより。


俺の切れ長の目を見てしまったもんだから。


ひょっとしたら、


俺の正体、バレちまったかもしれなかった。








iPhoneから送信

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る