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「小説家になろう」で見かけた素敵なお話。
少女の可愛らしい初恋物語とも読めますけど、人はなぜ生きるのかという深遠な問いにさえ心を致さずにはいられない、そんな読後感を抱かされます。
まず、テーマとなるのはバレンタイン。
今日日は、大人の世界でも「職場でのチョコ配りは止めよう」という話も出る微妙な話題ではありますけど、そこは問うべきポイントではありますまい。
少女は、暮らしているマンションで、同学年の友達に手作りチョコを毎年配っている。
きれいにラップをして、届けて回る。そうすると、各家庭でも心得たもので、少女にお返しのお菓子を用意して待っていてくれる。
(母親も大変だぁ、と私などは思ってしまうのですが、そこもまた、ポイントではないでしょう)
少女は、常日頃主張します。
「いないよ! みんな同じくらい好きだから恋とかじゃないよ。恋と友情の違いって分かんないもん」
誰かが特別という訳ではなく、みんな友達。みんな同じ。
それなのに、今年は、春君が、自分にはお母さん任せで、他の女の子とは直接チョコを交換するという話を聞き、遠目に見て、急に動揺を覚えてしまう。
なぜ、誰かを特別に想わなくてはならない? なぜ、みなが同じではいけない?
そう思っているはずなのに、考えているはずなのに、動揺してしまう初めての体験。
誰もが通る道でもあるけど、少女の母親は述懐します。
「お父さんのことまだ引きずっているのかしら」
この一記述で、少女の家庭には父親のいない事が伺えます。
死別なのか離婚なのか、物語は詳述しませんが、「誰かを特別に想うことは嫌い。出会いには終わりが付き物だから」という独白から、父親との別離が彼女の心情に影を落としている事が、普通の読者ならば十分に読み取れます。
思春期と呼ぶにはまだ早い少女の時、人はなぜ、誰かを特別に思うのか。
誰をも特別視したくないのに、なぜ、特別な人を心に持ってしまうのか。
初々しくもほろ苦い、少女の戸惑いを見事に活写したこの作品が、私は大好きです。
作者からの返信
小説家になろうでも感想を頂いたのに、カクヨムにも、ありがとうございます!!
深く考察をして頂いたことを嬉しく感じています。
正確に読み取って頂けて嬉しいです。十分に読み取れる、というお言葉に安心しました。
この話を大好きと仰っていただけて本当に嬉しい限りです。この小説を書いて良かったと心底思いました。
ありがとうございました。
切ない感じが……あれですねこう
複雑な人間の心の揺らぎが表現
やっぱりお上手ですね( ・ิω・ิ)
作者からの返信
コメントありがとうございます!
そう褒めて頂けて嬉しいです!💕
誰でも経験するだろう初恋の失恋話でした(*^^*)