塩梅

あきら

プロローグ

「空っぽだ。」

23時00分、アルバイトから帰宅するとそう時計がつぶやく。

特に何かにあったわけではない。昨日、先週とほとんど変わらないリズムをメトロノームで刻んでいるだけなのに、不思議な疲れとストレスがある。何に対しての疲れ、ストレスなのか考えても何もならないと考えないようにして、冷蔵庫にある飲みかけワインを手に取り、空のグラスに注ぐ。

20歳になりたての春、酒の味もわからない大学生が、グラス一杯を一気に飲み干す。

「空っぽだ。」

再度、時計がつぶやいていると感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

塩梅 あきら @Belltree0404

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る