第15話 急いで


大変たいへんだ! マスターがもうすぐもどってきちゃうよ」

「え! ユニコーンさんもおじいちゃんを「マスター」って呼ぶの? 」

「うん、他のカップ達もそう呼ぶよ。マスターも女将おかみさんも全員に優しいんだよ。カップだけじゃないけど、さあ!元の世界に! 」


 きっと陶器の彼女を見てから一分ぐらいで私はポンという感じで元の喫茶店の椅子に座っていた。


「え! これって・・・」


私は今までのことは夢だったのかと、目の前のコーヒーカップのユニコーンを見つめた。するとカップの中でユニコーンはブルブルと体をふるわせて

「とう子ちゃん、このことは秘密だよ」

「もちろん!! 」 


そう答えた後、外から聞こえる音で、私はおじいちゃんがもうすぐお店のドアにやってくるとわかって、鍵を開けに行った。


「おじいちゃん、お帰りなさい! 」

「おお、とう子、元気いっぱいだな。もしかしたらあの難しいなぞなぞが解けたか? 」

「え? 」

私はそのことをすっかり忘れていた。

「どうしたんだ? 何かあったのか? 」おじいちゃんが心配そうな声で言ったので

「ちがうよ、えーっとね・・・なぞなぞの答えは、多分ね、コーヒーカップをすごく小っさくしたら指輪になると思うの。コーヒーカップが付いた指輪」


私がこう答えると、おじいちゃんは今まで見たことのないようなびっくりした顔をした。

「違う? おじいちゃん」

「違うも何も・・・よくわかったな。これはむずかしくて絶対にわからないと思ったんだ。でもすごいのは・・・お前の感かな」


 そう言いながら、おじいちゃんは近くのテーブルに大きな鞄をおいて、ポケットから小さな箱を取り出した。正方形のとても小さな紙の箱には、外国の文字が書かれてあって、ちょうど指輪が入りそうな大きさだった。

「ほら、いつもお店に来る「おしゃれ名人」っておまえが呼んでいる女の人がいるだろう? その人からのプレゼントだ。「箱はリサイクルでごめんなさい」っておっしゃっていたよ。開けてごらん」


フタをそっと取ると

「わあ!!!! 」

陶器の山と同じくらいの大きさの声を、私はあげた。



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