第12話 さびしいこと


 その女の子の顔は見たことがなかった。でもその子の着ている洋服ようふく、その模様もようは、さっきまでずっと見ていたものだった。


白いワンピース、スカートの所には少し背の高い薄い青紫あおむらさきの花。そでやすその周りはとても細い金色でふちどられていて、その金と同じ所には、小さな茶色い実と葉っぱの模様がある。とても可愛くて、その女の子にとても似合っていた。どこか悲しそうな顔をした女の子、そうさせたのは、きっと私だった。


「ごめんなさい・・・カップの事ばかり話して、ソーサーのあなたのことを・・・」私がそう言うと、その子は


「良いのよ、とう子ちゃん、私、とう子ちゃんにお店に連れてきてもらって、とっても楽しいの、ああ、お願い、とう子ちゃん泣かないで」


気が付いたら、私は泣いていた。


 泣いている私をソーサーから人間の女の子になった彼女はなぐさめてくれた。お客さんのほとんどは私と同じようにカップの、ユニコーンたちの絵に夢中になったそうだ。ソーサーの彼女はどれだけさびしかっただろう。


でも入院前のおばあちゃんが

「このソーサーがとても素敵だと言うお客さんがいてね、お店を教えたのだけれど、もう全部売り切れていたんですって」

と話してくれたことがあった。それを聞いて私はとてもうれしかったけれど、そのことも・・・ソーサーでコーヒー牛乳を飲んでいるときでさえ、思い出せなかった。


「ごめんなさい・・・」

「とう子ちゃん・・・ユニコーンさんに頼まれて来たのでしょ? 実はね・・・私もとう子ちゃんに聞いて欲しいお話があって」


ユニコーンと同じ顔をした。


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