第8話 変わらなきゃいけないってわかってる。

 やっぱり、来てくれないよね。どれくらい泣いていたんだろ?


 すっかり暗くなっちゃった。今日は、時間が経つのが早いなぁ。


 泣いたから、お化粧も取れちゃった。授業もさぼっちゃったし。それに今日は、彼の家にこっそり行って、お料理もできなかったなぁ。


 あたしも変わらなきゃな…。いつまでも、今日のことに縛られてちゃ、だめ。


 彼の彼女はもうおしまい。


 こんなになってまで、続けることじゃないよね…


 これからは、何をしていこうかな?


 がんばって勉強続けて、有名な大学に入ったらあいつすごいって思うかな…?


 就職とかしたら、パーってお金を使えるのかな?海外旅行とかに行って、誰かに自慢するのもいいなぁ。


 ダイエットは出来てるから、また別の人とお付き合いできるかな?なんて。


 でも、おいしいものをおなかいっぱい食べるのもいいな。


 そしたら、太っちゃって新しい恋人もできないか。


 ははっ…あいつにも笑われちゃうよね。


 ほら…バカバカしくなった…


 はぁ、もう帰ろう…。お母さんに連絡しなきゃ。って充電切れてた、怒られちゃうな…


 立ち上がろうとすると、体に力が入らない。また、その場に座り込んでしまった。このままじゃダメかな...?


 ううん、だめだめ!変わらなきゃいけないんだって…!彼はもう来ないんだから。


 1人だって怖くたって寂しくたって、乗り越えるって決めたんだから…!


 それなのに、また涙が溢れてきた。強がってるだけだって、わかってた。


 ここにいたいよ…彼が来るまで。


 戻りたいよ…いっぱい辛いこともあったけど、あの日に戻れるなら、子供の頃からやり直したっていい。


 そしたら、今度はあたしが彼の悩みを聞いてあげるんだ。憎まれ口だってあたしのほうが聞いてあげる。


 彼のために頑張っているあたしが好き、そうじゃないあたしなんて嫌い。


 彼にとっては迷惑だったかもしれないけど...


 それでも、変わりたくないんだって感情だけが強くなる。


 本当は、バカバカしくなんてならなかった。


 思い出の場所も変わっちゃったね…


 彼にもあたしと別れる事を、変わるってことを、押し付けてたんだね…


 ごめんなさい、こんなに辛かったなんて。


 彼も後輩の子も思い出の場所も、あたしをおいて、変わっていく。


 あたしだけ、ひとりぼっちのあたしだけが変われない。


 もう、立ち上がる元気もない。このままお家にも帰れないのかな?


 ずっと今日に縛られたままで、明日にもおいていかれちゃうのかな。


 でも...明日になっても彼には会わせる顔がない...












 もうどうでもいいよね。なんだって。


 













 「大丈夫か?」


 意識が薄れかけていく中、来ないはずの彼の声が聞こえた。


 幻聴かもしれない。それでも、あなたの声が聞けて良かった。

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