第7話 その時、彼女は…

 今朝、別れた彼が後輩の女の子と付き合っていた。


 あれから保健室にいて、今朝のことを思い出すたびに、彼で頭がいっぱいになった。


 本当は、別れるつもりなんてなかったのに。彼からの告白がどうしても聞きたくて…


 もっと別の方法だってあったのに…あたしは、なんで別れちゃったんだろう。


 本当は1ヵ月記念だって用意してたのに。


 ううん、これからだってずっと一緒。大学受験でも就職活動でも乗り越えていくんだ。ってそう思っていた…


 何年後かはプロポーズとかあったのかな…


 彼と付き合ってからは、お化粧とか勉強とかお料理とか頑張ってて、ダイエットだってしていたのに。


 自業自得なんだろうけど…頭の中がごちゃごちゃだ。


 もうわけわかんない…

 

 授業どころじゃなくって、ずっと保健室から出られなかった。


◇◇◇◇◇


 どれくらいの時間が経ったんだろ…授業も、部活も、今日はおしまい。


 保健室の先生が心配してくれて、すごく時間が経っていることに気づいた。


 帰らなきゃ…明日になったら全部元に戻ってないかな、なんて…


 本当は、彼が意地張って後輩の子と付き合ってるなんて、嘘をついててほしい。


 それで明日謝ったら、彼に嘘だったんだって言って欲しい。仲なおりしたい…


 下ばっか向いてちゃだめだって、自分に言い聞かせる。ふと見上げると屋上に人影が見える。


 彼だ…!ここから声をかけたら気づいてくれるかな…?でも今さらごめんなさいって言えるかな…


 そんなことを考えていると、もう一つの人影が見えた。彼の後輩…今の彼女だった。


 そこからは頭が真っ白になった。


 気がついたら、逃げ出してた。彼と後輩の子が仲良くする姿を見たくなくて。


 1人になりたい。そう思ったあたしは、悲しくなるといつも行く場所にいた。


 ここは、彼と初めて会った場所。初めて会った時は、あたしは親とはぐれて迷子になっていた。


 怖くて、寂しくて1人で泣いていた。気がつくとあたしの前に1人の男の子がいた。


 「だいじょうぶ?」


 「…」


 「ないたら…ダメ、なんだよ…?」


 その男の子も、親とはぐれていて涙と鼻水を垂らしながら、泣いていたあたしを前に強がって、そんなことを言っていた。


 「あ、あんたも…ないてるじゃん…」


 「おれは、ないてない…!」


 それから、泣いているのもなんとなく、バカバカしくなって2人で親を探した。


 親を見つけたあたし達は、安心して2人で大泣きしていた。


 彼との出会いは、なんだかみっともないものだった。


 それからは、嫌なことがあるとここにきて、悩んでいたことがバカバカしくなるまでこの場所にいた。


 そんな時は、いつの間にか彼も来てくれて一緒にいてくれた。


 ずっと愚痴を聞いてくれて、憎まれ口にもこたえてくれてた。


 でも、もう彼は隣にいない、来てくれない。後輩の子の彼氏だから。


 明日、謝ったってもう遅いよね…?


 諦めなきゃいけないんだよね…?

 

 そんなこと、できないよ…。


 景色がにじんで、スカートが涙で濡れていた。


 あたしはあの時みたいに1人になるのが、怖くて寂しくてみっともなく泣いていた。


 そうすれば、彼が来てくれるんじゃないかって思ったから…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る