第4話 されど、幼なじみはもっと生意気

--教室--


 今日も今日とて、後輩にからかわれてしまったが、それ以外はとくに何事もなく教室に着いた。


 ホームルームが始まるまでだけど、付き合っていた時は、禁じられていた読書を楽しむことができそうだ!


 「ちょっと、話があるんだけど」


 やっと解放されたと思った矢先、幼なじみが声をかけてきた。


 「...なんの話?」


 「さっき後輩の娘と歩いているのを見かけたんだけど。何を話していたの?まぁ、あたしには関係ないんだけど」


 「たまたま通学路で会って、登校しただけ、だけど」


 付き合っていた頃であれば別だけど、関係ないのであれば、話しかけないで欲しい...


 貴重な読書時間も削られていく。


 「何を話していたかを聞いているんだけど?どうせ、あたしと別れた寂しさを紛らわすために、あの後輩の娘に付き合っている人がいないか、確認していたんだろうけど」


 「いや、別にそんなこと...」


 「それって、セクハラだからね。あたしみたいに昔から知り合った仲でもなければ、訴えられても仕方のないことなのよ?」


 全くこちらの話を聞こうとしない。思えば、罰ゲームとやらで付き合ってた頃もこんな調子だった。


 「まったく、あんたは昔からそそっかしくて、見てられないわ。別れてから1日もたたない間にそんな節操もないことをするなんて...」


 「はぁ、もうなんでもいいよ...」


 「...ほら、あたしになんか言うことがあるでしょ?」


 一方的な話に何を言えというのだろうか?


 「ほら、あたしと付き合えた事が忘れられません。別れたことを後悔しています。もう一度付き合ってください。でしょ?」


 「キミとオツキアイした事がワスレラレマセン。ワカレタコトをコウカイしてイマセン」


 「カタカナ発音はいただけないわね。昨日別れた相手を前に恥ずかしいのはわかるのだけれど、男としてちゃんとしないといけない時があることを理解しなさい?」


 カタカナ発音をしたせいか完全に後半は聞き流されてしまったようだ。


 男としてとか、どちらがセクハラなのか...


 「そんなんだから、あたし以外に相手をしてくれるひとがいないのよ。今、この機会をのがしたら一生あんたなんか相手にしてくれる人なんていないんだからね」


 カチンときた。さっきから一方的に話をされてもう我慢できない。


 「はぁ?彼女ならいますけど?」


 「なっ!?」


 「お前がさっき見ていた後輩と付き合っているんだ」


 勢い余って、後輩と付き合っていると言ってしまった。聞かれてなければ大丈夫だよね?


 「は、はぁ?あんたなんかがあんな可愛い娘と付き合えるわけないでしょ?」


 「昨日、一方的にふられるのを見てわざわざ声をかけてくれたんだ。普段はからかってくるけど、お前と違って思いやりがあるんだよ!」


 「う、ぐ。も、もういいわ。あんたなんか知らない!勝手にすれば!」


 そう言うと幼なじみは立ち去っていった。


 勝った。少し虚しいがすかっとした。そのうちあいつの頭も冷えるだろう。


 後輩と付き合っていないことがわかれば、いろいろと冷めて、無事に別れられるだろう。


 ヴヴッ。ポケットに入れていたスマホが振動する。


 そこには1件のメッセージが表示されていた。


 『ご利用ありがとうございます!٩(>ω❛)b』


 後輩からだった。いったい、どこからみているのか。


 恐る恐る、廊下に目をやるとそこにはメッセージの顔文字と同じポーズをしている後輩がいた...


 察するに一部始終を見ていたのだろう。何という敗北感。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る