獣人の種
今日は朝からそこそこお客が来ます。
昨夜は
たとえ犠牲者が出てもです。
彼らにとってこの世界はまだまだ生と死が地続きなのでしょうね。
死がとても身近にあるんです。
なのに彼らはとても明るくて自らの生を謳歌してる。眩しいほどに。
だから私もここで生きることが出来ているというのもあるかもしれません。彼らの明るさに救われてると言うか、彼らに感化されてると言うか。
『これでいいんだ』
っていう気にはさせられます。
彼らの<生>はとても濃密なのです。
その一方で、彼らの形質はやはり非常に不自然と言えるものでした。自然な進化によって今の姿になる確率は、私達は生物学については専門家ではないものの、およそ合理的な数値になるはずがないことだけは分かります。
せめて彼らのうちの一種だけであれば、たとえば、
しかし、現時点で確認されている獣人は、
果たしてそれだけの種が同時に人間に近い形質を得るという可能性が有り得るでしょうか?
およそ宇宙開闢のそれに等しいレベルの確率になるような気がしてなりません。
となれば、やはり、直接的か間接的かという違いはあるとしても、何か人為的な影響があったと考える方が自然だと思われます。
そして、私達は、それを裏付けるかのような自体に遭遇することになったのです。
それと言うのも、午前中は良い天気だったのも拘らず、午後から急に厚い雲が空を覆い、激しい雷鳴が轟き始めました。
強い雨も降り始めます。
ガーン!! ドカドカドーン!! ガリガリガリガーン!!
という地響きさえ伴うそれに、ノーラも赤ん坊もとても怯えています。
「大丈夫! 大丈夫だよ。ここにいれば大丈夫……」
正直なところ、確証があってのことではありませんが、少なくとも建物内にいれば落雷の直撃を受ける可能性は下がるはずなので、たとえ気休めであってもそう告げることにはある程度の合理性もあるでしょう。
もっとも、それ以上に、私が抱き締めていたことが効果的だったのかもしれません。二人はいくらか安心してくれたようです。
けれど、雷鳴が遠ざかり始めた頃、それは現れたのでした。
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