捜索
バンゴの後にも立て続けにお客が訪れ、私はその対応に追われました。
客足が途切れたことで私は店からリビングへと続く
自分達が<データヒューマン>になってしまったことを自覚しつつも、伍長の言うように自分では生きているとしか思えない限り私達は自らの人生を全うすることを心掛けていました。
一時は絶食による自死を図ったクラレスも、メンバー達の支えもあり、今では落ち着きを取り戻しました。それどころか、メンバーの男性と交際を始め、子供までもうけてしまったのです。私達のグループでは最初に。
あんなに騒いでいたのに現金なと思うかもしれませんが、もしかするとそうやって自身の感情を早々に爆発させたことで逆に切り替えも早まった可能性もあるでしょう。
結果として良好な状態になったのなら、それで構いません。
けれどある日、哨戒に出た伍長が帰投予定時間になっても帰ってきませんでした。
「彼なら何があっても対処できると思うが、念のため、捜索に出よう」
「はい…」
少佐の指示に従い、ツーマンセルで三チームを作り、伍長と、ペアを組んでいたメンバーの捜索に、私達は出たのです。
もっとも、この時点で私達にはある種の予感がありました。
ここでは死ぬことはありませんので、何らかの事故等があったとしても心配することはありません。怪我を負っても時間さえ掛ければ回復しますし、それを収容すればいいだけです。
もしそうでないのなら、考えられるのは……
そうして私と少佐は伍長が辿ったはずのルート順に、一チームはルートを逆に、残る一チームはルートを見渡せる山から見るという形で捜索に出たのですが、ほどなくして、
「やはり……」
少佐が呟き、私も察しました。
またあの<現象>です。
見えない壁に阻まれ、しかも景色がぼやけて見える。
こうなってはもうただ解消されるのを待つ他にありません。
簡易な高炉で砂鉄を溶かして作った鉄片を石と砂で徹底的に研いで鏡のようにしたナイフに太陽光を反射させ、他のチームと交信。帰投を促しました。
けれど、その時、
「む……っ?」
少佐が緊張して、それが私にも伝わります。
と同時に、上下の感覚が失われ、平衡感覚が保てなくなったのです。まるで、酷い眩暈のような……
「なるほど…これがそうか……」
少佐が呟いた言葉の意味が私にも分かります。なぜなら、<報告>にあったとおりの状況でしたから。
おそらく
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