たった一言で 君らしく
仲仁へび(旧:離久)
第1話
男女平等なんて、夢のまた夢。
いつになったら、私達に光が当たる日はくるのかしら。
本当にみんな男って、馬鹿ばっかり。
その一言だけは許せないわ。
その男は、よく会社で競うライバルだった。
「ちょっとは女らしくしたらどうだ」
いつもなら、すまし顔で対応しているのに、あんまりにも言われ過ぎて、限界。
むかっときて、つい口げんかになってしまったわ。
こんなんじゃ駄目ね。
反省しなくちゃ。
でも、うんざりする私の気持ちも分かって。
「女らしく」
私と話す男はいつもそう言うのよ。
私が、大人しくないから?
私が、男の人を立てて行動しないから?
私が、勝気だから?
私が、行動派だから?
「まるで男みたいだ」「女じゃない」「女らしくないお前はおかしい」
馬鹿馬鹿しい価値観ね。
貴方達っていつもそう。
型にはまっちゃって、自分の意見を絶対だと思ってるのよ。
その無駄な事しか喋れないお口で、もっとポジティブな言葉を言えないの?
無理よね。
「女らしくない」私に成績が負けてるんだもの。
ようするに、やっかみなのよ。
生意気な女を懲らしめる口実がほしいだけ。
皆がいう当たり前をふりかざして、私に嫌がらせしたいだけ。
つきあってられないわ。
今もほら。
そんな男が声をかけてきた。
仕事をするたびにこうなの。
面倒になってきたわ。
「君みたいな女性は始めて見たな」
私と話をするその男も、ぽかんとした様子で他の男と同じ事を言う。
「僕の周りにいる女性は、みんなこんなに行動的じゃなかった」
あらそう。
それは良かったわね。
あなたを尊敬して、補佐して、立てて暮れる人間ばかりで。
さぞ鼻が高かったのでしょうね。
でも、それを私にまで求めないでちょうだい。
けれど、彼は違ったの。
私の予想を超えた言葉を言ったのよ。
「でも、それが君らしさなんだね」
彼は私が私でいる事をみとめてくれた。
きっと、何気ない言葉だったんでしょうね。
それは、対して考えもしない、ただの一言だったのよ。
けれど、私にとっては特別な一言だったわ。
たった一言で 君らしく 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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