触媒、接着剤のようなもの

思考をふらふらと探しものにさまよっている

表現について考えると心身が苛まれるのだが

苦悩や材料だけでは思い描く物にはできない


シナプスが機能しないと伝達されないように

脳には素材と記憶を結ぶ触媒が不可欠だから

手がかりを求めて脳細胞の深部にダイブする


無秩序に散らばる輝きを星座に繋ぐ糸は意図

身請けをされる星の消えゆく光と闇のあわい

暗黒にひっそりと咲いていた紅い星雲の思惑


触媒は錬金術師の御用達であり接着剤である

それらにより文法力や想像力の均衡が取れて

目を見張るような輝きが錬成されるのである


しかし結局なにが触媒たり得るのだろうかと

いつまでもわたしは思い至れないのであって

今日も言葉を積んでは崩してみたりしている


どう優れていてどう凄いのかは判らなくても

文字をひと繋ぎのうつくしいものと思うとき

その詩歌はひとの心に静かに落ちてゆくのだ


ああ自分には詩心がないのだと嘆き哀しむが

そんなことだから掴み損ね続けているのだよ

景を紡ぐための触媒、接着剤のようなものを





20210731

ココア共和国9月号(ボツ)

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