第479話 生還と宴Ⅴ
「でも私としては良かったかな。
ミクちゃんがそう呟くと、
「確かにそうですね」
「ミク殿に同意だ」
クロノス、ルミエールもそう言って深く頷いた。
「だから絶対に倒しましょう。二回も撃退しているんです! 必ず勝てますよ!」
俺はミクちゃんからこういう言葉が出てくるのは意外だった。俺がまた死んで危険な目にあったから、こんな前向きな言葉が出てくるとは思わなかったからだ。何より、
「ナリユキ殿はいいパートナーを持ったな」
「そうですね」
俺がそう
「金柑のジントニックお願いします」
「かしこまりました」
リョウジさんに次のカクテルの注文を通して生ハムを頬ぼるミクちゃんは、どこにでもいる女子大生そのもの。ミクちゃんの笑顔を見る度に、この平和な時間を守らないと! そう思えてくる。
「余も1つ決意した事があるぞナリユキ殿」
「何ですか?」
「余は二人を命を投げてでも救う」
「うえ!?」
ともの凄く驚くミクちゃん。
「それはとても嬉しいですね」
「ナリユキ殿もミク殿も余によってはかけがないの無い存在だ。
「――恥ずかしいですね」
ミクちゃんはそう言ってガーリックトーストをかじった。照れているの全然誤魔化せていないぞ。
「愛情とは素敵ですね。カーネル王も早く見つけて下さい」
クロノスがルミエールにそう言うと、ルミエールは「何だかな~」と呟いていた。
「ナリユキ殿もだ。余はたくさんの失敗をして過去に多くの友や部下を失った。今回、余が気絶している間にナリユキ殿が
「何ですか?」
俺のなかで
「生きててくれてありがとう。余はナリユキ殿を失いたくない……。大事な友を失いたくないのだ」
「ありがとうございます。俺も
「
ルミエールに俺はそう言われた。俺が不思議な人? 確かに前の世界でもそんな事は言われていたけど、殆どが皮肉が込められていた。でも今は違う。褒められているんだ。それもとびきり――。
「ナリユキ様には人が集まる不思議な力がありますよね。私もナリユキ様が意識不明の重体と聞いたときは生きた心地がしませんでした。もしもの事を想定して、そんな筈は無い――! と願っておりました。それはナリユキ様が、全ての人に対して全力で当たっているからこそ、深く悲しむ人や、御身を心配される方が多いのだと思います。私はカーネル王がこれから築き上げていく未来と、ナリユキ様が築き上げていく未来。この二つを見届けるのが私の願いですので」
クロノスもそう吐露してカクテルを飲み干した。
「お酒大して飲んでないのに、酔っ払いモード入ってるな。でもありがとう」
俺がそう言うと、皆笑みを浮かべてくれた。時間潰しで来たつもりが皆の本音を聞けた気がして嬉しかった。何より
「ねえ。ナリユキ君」
「ん?」
「一人で抱え込まないでね? 皆で戦って皆で勝とうよ」
「私も何かできるのであれば手伝うからね!?」
「私もです。微力ではありますがナリユキ様の指示は、何なりと受けるつもりです」
ルミエールもクロノスもそう言ってくれた。ルミエールは友として。クロノスは君主を見るような眼差しを向けてきた。俺の力になりたい。平和な世の中にしたい。
そんな強い想いがヒシヒシと伝わってくる力強い言葉だった。
「余の近い目標は
このようにして、このメンバーだからこそ話せる夢や目標の語り合いが始まった。そしてあっという間に宴の時間となっていた。
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