第478話 生還と宴Ⅳ

「本当に美味しいねこのお酒。ナリユキが言った通り、マーズベルのミカンも絶品だね」


「美味い」


 青龍リオさんはたったそれだけの感想だったが、笑みがこぼれていたのでお酒に満足しているのが十分に伝わった。また、クロノスもマイラというお酒を頼んでいる。これは赤ワインにウォッカとスウィート・ベルモットをブレンドしたお酒だが、フレーバーな香りが引き立つ大人の味。反応は勿論――。


「美味しいですね。マーズベル産の赤ワインの芳醇な風味が引き立っています。ウォッカいい仕事していますね」


「――お酒の話全く入れないけど、この苺のシャンパンカクテルも物凄く美味しいですよ。いくらでも飲めちゃいます」


 ミクちゃんはそう言いながら、カクテルを既に半分程飲んでいた。


「そんなに一気に飲んで潰れたら駄目だぞ」


「分かってるよ。大丈夫大丈夫」


 俺とミクちゃんのそのやりとりを見ていたルミエールが不気味なくらいニコっと笑みを浮かべていた。


「何だよ」


「本当に仲良いよね~」


「どうだ? 羨ましいだろ?」


「どちらかと言うと微笑ましいかな?」


 ルミエールの嫉妬を買え作戦は見事に失敗した。まあ、ルミエールがこういうので嫉妬するような人間では無いとは思っているけど、想像通り過ぎてつまらん。


「それにしてもナリユキ殿が神と会ったとはな。神とはどんな話をしたんだ?」


「えっ――神様!?」


「神様と会ったとはどういう事ですか?」


 そう言えばルミエールとクロノスには何の説明もしていなかったな。


「まあ俺は黒龍ニゲルとの戦いで意識を失った。それは想像できるだろ?」


「まあ私も何回かあるし分かる。その間夢のようなものを見たりすることもある」


「そうだろ? そこで会ったのが二人の神だったんだ。一人は創造神ブラフマー。俺のユニークスキル創造主ザ・クリエイターのユニークスキルを独自の能力として持っていた神様だ。もう一人は知性の神メーティス。俺の知性・記憶の略奪と献上メーティスの能力を持っていた神様だな」


「ユニークスキルという事は、私達のユニークスキルも、元々誰かの神様の能力になるのかい?」


「そういう事だ。まあ神様では無く太古の人々が持っていた能力だな。あれ話したことなかったっけ?」


「いや、知らないよ」


「私も知らないですね」


 ――そう言えばバタバタしていて話せていなかったか。この神族語で読み解いたユニークスキルに関する情報は、六芒星ヘキサグラムのトップに話をしていたおいたほうがいいな。青龍リオさんとアスモデウスさんは知っているから、レンファレンス王とヴェストロさんだな。


「俺達のユニークスキルってのは、太古の昔の人が持っていた特殊能力らしいんだ。その中でも強力な能力を神様が持っていたらしい」


「成程ね――て、言うかナリユキなんでそんな事知っているの?」


「冥王ゾークの魂魄こんぱくを入手したから、特定の人だけが読める神族語という言語が読めるようになって、地下世界アンダー・グラウンドに石版を読めるようになったんだ」


「凄いですね――」


「因みに神族語は余も読めないからな」


 青龍リオさんがそう言うと、ルミエールもクロノスも「えっ!?」と驚いていた。


「これで前提はある程度分かっただろ?」


「そうだね。そして、ナリユキは神様とどんなお話をしたの?」


「そうだな。創造神ブラフマーは、俺達がいる世界を見守る事はできるが、直接の干渉はできないと言っていた。青龍リオさんもそのうちの一人に入るんだけど、四龍は創造神ブラフマーは創り出したようだ。創造神ブラフマーの能力は万物を生み出すことができる。俺は今、水や炎などの自然現象や、鉄などの物質も生み出せないだろ?」


「そうだね。自然にあるものや、人間が生きるのに必要なモノは生み出せないよね? 水や鉄、油、塩、血液と言った類は生み出せない。また炎、風、雷、海などの自然もそう。出せる条件は岩などの固形のもので、且つ人間には必要とされていない物質というのが条件だよね。液体や気体を出すことはできないから、手から煙を出すこともできないし、シャンプーやコンディショナーも液体だから出すことはできない」


「――なんか初めてナリユキの創造主ザ・クリエイターのスキルで、出せる条件聞いたけどややこしいね」


 ルミエールがそう言ったので俺は深く頷いた。


「まとめるとこういう事だな? ①生物が必要とする水や油、ビタミン。カルシウム、塩などを出すことはできない。②液体や気体は出せない。③自然界のモノは出さないモノの方が多い。こういう事だな?」


「簡単にまとめるとそうなりますね。でも、俺の創造主ザ・クリエイターが、知性・記憶の略奪と献上メーティスのように覚醒すると、万物を生み出すことができるので、今まで出せなかったモノどころか、生き物まで生み出すことができるらしい。青龍リオさんのような龍族を生み出すことも可能って事だ」


「スケールが大きくなってきたぞ~」


 ルミエールはそう言って目をキラキラとさせていた。


「それならば、マーズベルは凄い戦力増強できるな。自国で強力な戦士をポンポンと生み出せるわけだろ?」


 青龍リオさんはそう言って、キールを口に運んだ。


「いや、黒龍ニゲルの性格を見て下さい。強い生物は出来たけど、あそこまで酷い性格は想定していなかったらしいです。細かい性格までは制限できないんですよ。ですので、ブラフマーは俺に黒龍ニゲルを止めろと言ってきました」


「成程。干渉はできないって事は、その神は黒龍ニゲルを止めることができないのだろ? それでナリユキ殿に頼んだ」


「そういう事です」


「迷惑な神だな……」


 青龍リオさんはそう吐き捨てるとグラスをリョウジさんに見せた。


「おかわりを貰おう」


「かしこまりました」


 いきなり飲むペース早いなこの人。

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