第448話 会議Ⅲ

地下世界アンダー・グラウンドに送り込む人選は決めたか?」


「まだ決めていないのう。他に考える事がたくさんあっての」


「どういう内容だ? 余が到着したときに大声で叫んでいたな?」


「――見られていたら仕方ないのう。実は黒龍ニゲル・クティオストルーデ以外にも気になる事が2つあるのじゃ」


「それは大きな悩みか?」


「当り前じゃ」


「――なかなか深刻のようだな」


 青龍リオがそう言ってくると妾は思わず重い溜め息が出た。


「まず1つ目は魔界で2人の魔王が戦争をしている事じゃ。まあいつもの如く、どちらかの魔王が死ぬことはないじゃろうがな――」


「ベリアルとルシファーか?」


「その通りじゃ。戦争で食糧が枯渇してしまえば、奴らは地上まで来る可能性もある。ベリアル以外にも地上に出て来た者がいてな。それが妾の魂魄となった魔王ベレトじゃ。奴はベリアルと戦ったことがあり、その際食糧危機で地上に出て行った事がある」


「成程な。戦況はどうなんだ?」


「ルシファーの軍が不利で食糧が少し枯渇しているみたいじゃのう」


「ベリアルのことだ。仮にルシファーがこっちへ逃げてきたら追いかけてくるだろうな」


「そういう事じゃ。そうなってくると妾も手に負えん」


 妾が相当困った表情を浮かべているのか、「やはり渡しておくべきだな」と呟く青龍リオ。一体何の事じゃろう?


「これを渡そう。金貨はいらん」


 そう言って青龍リオが渡してきたのは何やら黒い箱じゃった――。


「婚約指輪か何かの?」


 まあ青龍リオも龍ではあるが顔は良いほうじゃからのう。まさかモテ期がきたかの!?


「そんな訳なかろう。中身を確認してみろ」


「ふむ。分かった」


 少し残念な気持ちになりながらも箱の中身を確認してみた。するとそこには転移テレポートイヤリングが入っていた。


「――これはこれで予想外じゃ。結婚指輪ではなかったが、まさか転移テレポートイヤリングとはのう」


「これからは、オストロン、ヒーティス、マーズベルの三ヶ国で協力していくことが更に増えるだろう。その際にすぐに駆け付けられるようにしたいのだ」


「成程じゃのう。これで妾もナリユキ閣下を夜這いできるって事じゃな」


 想像するだけ大興奮じゃ。一度でもいいから抱いてほしいのじゃ。


「冗談に聞こえないから止めてくれ」


「本気じゃからのう?」


 今の妾は信じられないくらいニニヤニしている筈じゃ。もはや気持ち悪いレベルじゃろう。でもいつでも会えるというだけで妾にとっては凄く嬉しいことなのじゃ。会えるだけで幸福が満たされるからのう。


「……やっぱりお金払ってもらおうか。金貨10枚」


「友人価格ですらないのか……」


「下心丸出しだからな。ナリユキ殿に迷惑をかけないと誓え。特に夜に会いに行くことは許さん」


 と、青龍リオが妾の事を睨めつけてきた。物凄く怖い目つきをしているのじゃが――。


「コホン。そこは大丈夫じゃ。健全に使うことを祈ろう。まあ少し顔を見たいときは使わせてもらうがのう」


「その辺りは好きにすれば良い。落ち着いたらマーズベルの観光でもするがよい」


「そうさせてもらうかのう」


「話が逸れた。あと1つ気になる事は何だ?」


「それじゃ。そこはコヴィー・S・ウィズダムの事なのじゃが、アヌビスが魔真王サタンを使えるかもしれないと言っていたじゃろ?」


「ああ。確かそれで気がかりな事があると言っていたな」


「そうじゃ。魔王が今の魔王の前に2人いたのは知っておるじゃろ?」


「うむ。ベレトとザガンだったか?」


「そうじゃ。ベレトは老衰で息絶えたのじゃが、ザガンに関しては行方不明になったので、新しい魔王が誕生した。それがルシファーだったのじゃが、コヴィー・S・ウィズダムが持っている魔王の血――それはザガンの可能性があるんじゃないか? と思っておってのう」


「ザガンはどういう能力を持っていたのだ? そもそも魔真王サタンは使うことができたのか?」


「正直そこまでは分からない。じゃが女性の魔族とは思えない程力強かったと聞く」


「ん? 戦ったことはないのか?」


「無いのう。同じ女性として何度か話をした事はある。プライドがやたらと高い魔族じゃったの」


「成程。そうなってくると、ザガンは行方不明では無く、何者かの手によって殺されていたと考えたほうが妥当だな。その死体をどこかで見つけたコヴィー・S・ウィズダムが入手し、持ち前の技術で自分の体内に取り込んだ」


「そうじゃの。まあコヴィー・S・ウィズダムが自ら手にかけた事は無いじゃろ。それこそ2,000年以上前の話じゃからのう」


「ルシファーが魔王になる前の事だもんな?」


「そういう事じゃ」


 妾がそう頷くと青龍リオは「う~む」と唸っていた。


「まあ考えていても仕方なかろう。魔王どもの戦争を気にしつつ、黒龍ニゲルの撃破が最優先だ。千里眼オラクルアイで見たところ、奴はどこかの国へ向かっているようだしな」


 成程。確かに時期としてはそろそろ動くと思っていたのじゃが、いよいよという訳か。


「それは随分と嫌な報告じゃの。新しくなった天眼で未来を視えるかの?」


「それはまだだな。余のこの能力は少し先の未来しか視ることはできないからな。今は下手に動かないほうが良い。恐らくナリユキ殿も気づいてはいるが、空中戦は分が悪いので様子を見ているところだろう」


「成程じゃのう。瞬時に戦えるのは、妾と青龍リオとミク殿の3人となる訳じゃな?」


「ああ。ナリユキ殿が空中戦で本領発揮できない状態で奴に喧嘩を売るのは無謀すぎるからな」


 ――喧嘩を売る――。かつては黒龍ニゲル・クティオストルーデは、青龍リオと元龍騎士のルシファーと手を組み撃退し封印した――。


青龍リオよ! 名案が浮かんだぞ!」


 この作戦――0%では無い。青龍リオの頭脳があれば可能性が広げられるかもしれない!

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