第445話 魂魄と石板Ⅲ

「でも、神々の能力を自分のユニークスキルに変えたって事は、能力をスキルに変換させる能力なり、それに関する何らかのスキルをミロクは持っているって事になるよね?」


「そういう事だな」


「その3人の神を倒すことができる程の力を、森羅万象アルカナ天変地異アース全知全能ゼウスを持つ前から持っていたという事になるな」


「そうじゃの。当時の神々の力が一体どれほどのものだったかも気になるところじゃのう」


「そうですね。ただ、言えるのは俺が持っているこの知性・記憶の略奪と献上メーティスを含めた、他のユニークスキルには、当時の神の名前が付いているユニークスキルがある。それらは全て、神が持っていた特殊能力だったそうだな。他にも色々なユニークスキルがあるけど、それらは全て、遥か遠い昔の人々が持っていた能力が、ユニークスキルという概念に生まれ変わって、俺達が使えているのかもしれない」


「成程。確かにそう言われると自然だな」


「しかし、長い間スキルという概念で育っておるからのう――もしかしたら、悪魔の始祖様なら分かるかもしれんな」


「ん? 因みに悪魔の始祖っての誰だ?」


「ああ。サタンじゃよ。妾が生まれた頃には死んでおったからのう」


「成程。それで魔王クラスの魔族が使える限定的な強さの事を魔真王サタンと呼ぶのか」


「誰が言い始めたかまでは知らんがのう。恐らくそういう事じゃ」


「へえ――色々知れると面白いものだな」


「それで、結局のところ神様達の存在が知れ渡っていなかったのは何でなんだろう?」


 ミクちゃんが再度そう問いかけきた。


「倒したのがミロクだろ? ミロクが神々の存在を隠したというのが妥当だろうな」


「しかし何の為に神の存在を隠すのだ?」


 青龍リオさんが俺にそう問いかけてきた。


「正直そこまでは分からないですね。ただ隠すという事は何らのマズい情報があるんじゃないでしょうか?」


「そう考えるのが妥当だな――ふむ」


 青龍リオさんはそう唸りながら手で口元を覆って、熟考し始めた。青龍リオさんなりに色々な仮説を立てているのだろう。


「ゾークよ。他にも石板はいくつもあるのだな?」


 青龍リオさんがゾークにそう問いかけると、ゾークは「ふむ」と言って頷いていた。


「いかにも。しかし我はここにある石板しか知らないので、もし情報がもっと欲しいのであれば、地下世界アンダー・グラウンドを探索してもらう必要があるな」


「成程な。これはマルファスか誰かに協力させた方が良いな」


「ナリユキ閣下が必要だと言うのであれば、ヒーティスからも数名輩出することができる」


「ありがとう。今度三人で話し合って地下世界アンダー・グラウンドの探索隊を編成しましょう」


 俺がそう言うと青龍リオさんとアスモデウスさんは頷いてくれた。


「しかし、地下世界アンダー・グラウンドに地上の人間を送り込むのは危険だぞ? 戦闘値の平均は5,000前後だ。我と冥龍オルクス以外にZ級の魔物はいないと思うが、Z級に近い魔物は結構いるようだ」


「7,000後半とかって事か?」


「そうだ」


「私みたいな人がウヨウヨいるって事かな? それだと中途半端な戦力じゃ厳しいね」


「そういう事だ。編成するのであればじっくり考えた方がよい。我の部下も数名送りこんでも良いが、5,000前後の戦闘値では足手まといになる」


「なかなかハッキリ言うな」


「仕方ないだろう。事実を今のうちに言っておかないと、後々面倒だからな。地下世界アンダー・グラウンドの魔物はプライドが高いうえに、自分より弱い魔物を見下す悪い傾向がある。そんな性格を持つ魔物と、中途半端な実力を持つ人間や魔物で部隊編成をしてみろ。たちまち空気が悪くなり、連携が取れずに部隊は壊滅してしまう」


「確かにそれは最もな意見だ。今度考えておくよ」


「何かあればいつでも我の元へくると良い。せっかくの機会だから、全面的に協力してあげよう。まあ、地上に出て一緒に戦ってくれという要望には応える事はできないが、地下世界アンダー・グラウンド内で戦うのであれば協力はできる」


「サンキューな」


 俺がそう言うとゾークは「ああ」と返事した後に、何か思い浮かべたような表情になった。


「因みにだが、地下世界アンダー・グラウンドと地上に悪影響を及ぼすかもしれない奴というのはどんな奴だ?」


「名前はコヴィー・S・ウィズダム。地下世界アンダー・グラウンドや地上の魔物を使って、自身を強化したり、新しい魔物を生み出したりと、なかなか危険な人物だ。そんな人間が最近本格的に動き出したようだ」


「アヌビスがずっと追っていた人間の事か?」


「そうだ」


「成程な。アヌビスとは直接の交流は無いが、奴が最近活発に動いている事は把握していた。それがその人間を追っていたという事だったか」


「実際にアヌビスさんと、アヌビスさんの部下にメルム・ヴィジャという巨虫きょちゅう種の魔物が、その人間と対峙したのですが、2人は手も足も出なかったようです」


「あと少しのところで2人は死んでいたかもしれない程の重傷だった」


 ミクちゃんの後に俺がそう説明をすると、ゾークは険しい表情を浮かべた。


「アヌビスが手も足も出なかったのは信じられないな。その人間ももしかしてZ級なのか?」


「恐らく。てかそうじゃ無ければアヌビスが手も足も出ないなんて事は起きない」


「成程。確かに気になる情報だな。そのコヴィー・S・ウィズダムとやらの人間、我のほうでも探しておこう。ナリユキ達は、我が共有した地下世界アンダー・グラウンドの脳内地図を元に行動するとよい」


「ああ。色々ありがとう」


「構わん」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る