第340話 情報交換Ⅰ

 俺達は館に戻ると最大30人まで入ることができる会議室で話を整理する事となった。ここにいるメンバーとしては、ミクちゃん、ランベリオン、ノア、ミーシャ、ベリト、アリシア、ベルゾーグ、アリス、フィオナ、メイ、アマミヤとなる。他国からは、ルミエール、クロノス、レンさん、アズサさん、ノーディルスさん、ネオンさん、青龍リオさん、アヌビス、マカロフ卿、メリーザ、スー、フーちゃん、メルム・ヴィジャとなる。俺を入れて合計25名とやたらと大所帯だ。マーズベルの主要戦力と協力してくれている皆には知ってほしかった。カルディア達に関してはこれが終わってから俺が転移テレポートイヤリングを使って会いに行き、情報を共有するつもりだ。


「何とまあ人数が増えたものだな」


「確かにそうだね。3人で冒険していたのが遠い昔のようだな」


「まだ1年経っていないけどな」


「本当だよね」


 と、ミクちゃんとランベリオンが楽しそうに想い出を語っていた。確かに、自国の人間では無いとは言えど。これほどの強い人達が集まるのは、正直俺も驚いている。元々友人と呼べるような人を沢山作る苦手なタイプだ。職場でもビジネスライクで特に深くは関わらない。だが、自分の部下だけを見ていた。家には定時には帰っていたけど、悩みごとがあれば自分の時間を少々削ってすらいいと思っていた。それは雨宮美雪という友人が自殺した事がキッカケだ――まあそんな雨宮が今、俺の目の前にいるんだから不思議で仕方ないけどな。


「皆、時間とってくれて有難う」


 俺がそう発言すると各々返事をしてくれた。


「まずは今回の事件の事の発端であるヴェドラウイルスを、亡くなってしまったイーサンに渡した人物についてだ。ご存知の通りQキューという男が、イーサンという男に話を持ち掛けた。そしてそのQキューという人物は、カルカラの貴族であるストーク・ディアン公爵だった」


「本当に驚きだよ――あのディアン公爵がね――」


「そうですね。今にも信じがたい話です」


 そう言っていたのは、良好な関係を築いてルミエールとクロノスだ。前提として2人はヴェドラウイルスに良い印象を持っていない。ルミエールに関しては、ヴェドラウイルスで一度死んでしまっているからな――。


Qキューことストーク・ディアン公爵は創世ジェスと呼ばれる組織の幹部。幹部は全員金色蛇の仮面を被っているらしい。そして幹部は全員か分からないけど、コヴィー・S・ウィズダムさんが開発に携わっている殺戮の腕ジェノサイド・アームという武器を使用している。これがまた強力で色々な効果あるみたいだ」


「どんな能力があるの?」


「名前だけど凄く強そうだよね」


 そう、話を始めたのはノアとスーのちびっ子コンビだ。


「光る剣を出したり、MPを吸収したり、吸収したMPを放出したり、腕を飛ばしたりと色々できる」


 俺がそう言うと、ノアとスーは目をキラキラとさせていた。


「欲しい!」


「それマーズベルでも造ろうよ! あ! マカロフ卿造ろうよ!」


 2人は話を聞いただけで大興奮。スーが立ち上がってマカロフ卿に打診したが、マカロフ卿はその要望にやれやれと溜め息をついていた。


「無理だ。私にはあんな代物を造れる人脈は無い」


 マカロフ卿がそう言うと「え~」と凄く嫌そうな表情を浮かべている。


「いいから座れ。でないと摘まみ出すぞ」


 肩を落として「つまんない……」と拗ねながらスーは着席した。


「そう言えばノア君はコヴィー・S・ウィズダムさんの事何か知らない?」


「それがハッキリ知らないんだ。1,000層目のボスだと分かるかもね。話だと爺さんが残した最高傑作らしいから。その辺りはカーネルの方が知っているんじゃない?」


 ノアがそうルミエールに話を振ると、ルミエールは首を左右に動かした。


「本当に知らないんだよね――だから行って確認してもらうしかない」


「そうなの? まあ仕方ないか」


 と、ノアは申し訳なさそうな表情を浮かべていた。


「そして、新しい問題としては、アリシアが持っている森羅万象アルカナが、あの方と呼ばれる人物から協力要請が出ている事だ。あの方はどうやら、アリシアに森羅万象アルカナを授けた人物らしい。その人物はどうやら、森羅万象アルカナ天変地異アース全知全能ゼウスという3つのスキルとリンクしている可能性が高く、これからマーズベルは厳戒態勢に入らなければならない。強さはZ級かS級の天井と見た方がいいだろう」


 俺がそう説明すると、「少し良いか?」とフーちゃんが割って入って来た。


「いいぞ」


 俺がそう言うとフーちゃんは「かたじけない」と一呼吸置いた。


「その先の話については私が知っている。結論から言うとその3つのスキルを持った人物は実在していた。神と呼ばれていたミロクという森妖精エルフだ」


 その言葉にアリシアとメリーザの表情が曇った。


「ミロク……」


「確かに聞いたことがあります。森妖精エルフの始祖です……」


 メリーザは名前を呟いた後に、アリシアがそう解説してくれた。


森妖精エルフのってそれはまた随分と時を遡るな」


「確かにそうですね。そもそも、森妖精エルフという存在は6,000年程前からの歴史となります。その始祖がミロクと呼ばれる我々のご先祖様と言い伝えられております」


「言い伝えられている?」


「情報がないのです。しかしながら私に森羅万象アルカナを与えたのが本当にミロク様であるのであれば妙に納得がいきます」


「6,000年か――流石に、余も生まれていないな」


「余も生まれていない」


 アヌビスが先にそう言って、青龍リオさんが後にそう続いた。2人共一人称が「余」だからややこしいったらありゃしない。


「6,000年という数字となると、世界樹ユグドラシルの樹齢くらいしか無いんじゃないか?」


 と、アヌビスが声を漏らすと。


「いや、魔王がいるだろ」


「ベリアルってそんな歳いっていたか?」


 と、アヌビスと青龍リオさんで討論を始め出した。割とそこはどうでもいい。


 俺がそんな苦笑いを浮かべていると、青龍リオさんが俺と目があうなり、コホンとわざとらしく咳払いをした。


「話を戻そう」














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