第317話 ノック消息不明の報せ
「これ本当だったかよ――」
そう言ってナリユキ君は新聞を見て驚いていた。同じ部屋にいるソファーに座っているマカロフ卿も一見冷静な表情をしているけど、頭をグルグルと回転させている様子だった。
「ノックが行方不明って――」
ということだ。私も吃驚したけど一番重要なのは誰がノックを殺したのかという事。もしかして、
「ノックと連絡が取れないんだな? トレイビ――いや、エド・ファーバーさんよ」
マカロフ卿は葉巻を咥えながら後ろ振り返った。スキルが発動しない手枷と足枷を付けているファーバーは私とレイが見ているから逃げられる事は無い。
「貴様等――ただでは済まんぞ!」
「威勢だけは凄いな。流石殺人鬼だ」
「貴様の臓物を取り出してやろうか? そしたら少しは被害者の気持ちも分かるだろ」
「ドイツの反乱軍のリーダーだった貴様にだけは言われたくない。俺と貴様で何が違うというのだ!」
「
「出そうとしたことはあるけどな」
ナリユキ君がそう意地悪な笑みを浮かべていた。マーズベルに
それに対してマカロフ卿は苦笑を浮かべていた。
「五月蠅い! 五月蠅い!」
ファーバーはそう言って発狂し始めた。必死にスキルを発動できないようにする手枷と足枷を外そうとしている。けれども、それは外れる事は無く、ただ手首と足首を痛めつけるだけ。
「エド・ファーバー。ノックの行方が分からないのは本当なんだな?」
「本当だと言っているだろ!」
すると、レイは小太刀の刃をファーバーの喉元に押し付けた。首からは少量ではあるけど出血していた。味方になってくれたのは本当に有難いけどあまりにもちょっと怖すぎるよね――私もアードルハイムで似たような事していたねそういえば――。
「ノックに恨みを持つ人物に心当たりなどはないか?」
「裏の人間なら沢山恨んでいたさ。ただ俺からすれば何人でも殺してもいいという任を与えてくれたから、俺の中であの方は神に等しい存在だ!」
そう大声で叫ぶファーバーは明らかに狂っていた。barで見たトレイビさんは本当にこの人だったのだろうか? と疑うレベルだ。まるで悪霊に憑りつかれているような表情の豹変ぶりに私は鳥肌が止まらない。戦闘値は明らかに下なのに恐怖すら感じる。これが本当の
「余計な事は喋るな。本当に殺すぞ」
レイからただならぬ殺気が放たれている。本当に少しでも動いたら殺す――そんな冷たい目だ。
「アンタのところのレイってなかなかヤバいな」
「いいだろ?」
ナリユキ君の質問にマカロフ卿はニッと笑みを浮かべていた。
「ナリユキ・タテワキ閣下。私にご指示を下さい。奴の見張りは他の者でも十分務まります」
「そうだな――少し俺がカルカラに行くか」
「は? 国主がカルカラに行ってどうするんだ!」
マカロフ卿がそう言ってナリユキ君に突っかかっていた。何かランベリオンみたいな立ち回りだなマカロフ卿――。
「一瞬で移動できる方法があるんだ。どんなものかってのは教えられないけど」
「まあ教えたくないならいい。いずれ教えてもらうさ」
「おお……」
マカロフ卿の強い姿勢にナリユキ君は圧倒されていた。そして、ナリユキ君は部屋の外へと出て行った。
「ノックの連絡が途絶えることは多々あるのか?」
「丸一日連絡が無かったことは今までに無い」
「そうか」
マカロフ卿はそのまま葉巻を吸っていた。
「いい加減俺を解放しろ!」
「逃がす訳が無いだろ。せいぜい人を殺せない苦痛と戦いながら死ね」
マカロフ卿はそう吐き捨てた。何か洋画に出て来そうな台詞だ。
しばらくすると勢い良く部屋の扉が開かれた。
「ノックを殺した人物も
「本当に!?」
「一気に2つの情報を入手したのか!?」
「ああ――まず、ノックを殺した人物についてだが――」
ナリユキ君はファーバーを見ていた。
「分かりました。外に出るぞ。さっさと歩け」
レイがファーバーを連れてこの部屋から出て行った。
「後でみんなにも知らせるが、先にこの部屋にいる2人に言っておく」
私は固唾を飲んだ。マカロフ卿からもどことなく緊張感が伝わってくる。
「まずノックはさっきも言ったように既に殺害されている。そして殺害した人物達はカルディア達だ。マカロフ卿も一度戦っているぞ?」
カルディアさん達だったのか――。一体どういう経緯で殺害に至ったんだろ――。
「人間と魔族のハーフだった奴だな。確かになかなか強かった。底知れぬ残忍性もあった――冒険者とは思えない程にな」
「そうだ。そのカルディアが殺したらしい。そして拷問をしていたらしいけど、吐かなかったから殺害したそうだ。情報を集めているうちにとんでもないクズだった事が判明したそうだ」
「ノックがとんでもないクズ? 私が知っている情報ではとんでもないと言えるようなクズエピソードは無かったが?」
「まあ色々やっていたらしい。秘密主義なんだろ?」
「私は本当に何も知らないんだな――」
マカロフ卿はそう言って肩を落として落胆していた。
「ここからがポイントだ。カルディアは
何その恐ろしいスキル。怖すぎない?
「通りで戦っている時にユニークスキルっぽいスキルを出してこなかった訳だ。なかなか特殊なスキルだな」
マカロフ卿がそう言うとナリユキ君は頷いた。
「それで、そのスキルを使って得た情報によると、
「本当に!?」
私はつい大声をあげてしまった。
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