第290話 脱出を目指してⅠ
「それにしてもジャックさんが敵だったとはね。それに
「そうだな――ミユキ殿はジャックに対して今思うと不審だったなと思うところはあるか?」
「無いわよ――強いて言うならば、会ってジャックさんの家に招かれて話をしたとき、やけに質問が多かったな~と思うくらいだわ。でも、警戒心が強ければ至極当然のことよ」
「そうなのだ。我もミユキ殿が意識を失っている時に考えていたのだが、思い当たらなくてな――完璧な立ち回りだったと思う」
「それにある程度の情報はあっちから漏らしてくれたしね。あまりにも自然過ぎて今思うと驚きよ」
「それを考えると、メルム・ヴィジャは奴が仕掛けた魔物だったのだろうか?」
「どうだろう。一概には言えないわね。ランベリオンはあの
私がそう求めるとランベリオンは「そうだな~」と言って顎を触り始めた。
「相当な手練れの者だな。ジャックも強いがあの
「どれくらいのレベルだと思う?」
「まあマカロフ卿やワイズくらいのレベルが妥当だろうな――ったく世界は広いな」
ランベリオンはそう言って溜め息を吐いていた。私もそう思う――ここ最近は特に強い敵とばかり
「
「どうだろうな。ただ、特徴的ではあったな」
ランベリオンはそうニッと口角を吊り上げた。笑顔は勿論いい事だけど、ランベリオンの真意が私には分からなかった。
「どういう事?」
「非常にシンプルだ。2m程の屈強な男で、両手とも義手という事だ」
「あれが義手では無い可能性もあると思わない?」
「ん? どういう事だ?」
「スキルはスキルなんだけど、元々普通にある手があんな形になるスキルとか」
私がそう言うとランベリオンは「確かにそれもあり得るな!」と手をポンと叩いた。
「まあ、いずれにしても手をロボットのように飛ばさせるなんて、それこそうぬ等の世界にある
気になる――凄く気になる。何でランベリオンはここまで日本の文化に詳しいんだ。
「本当に気になるから一回貴方の過去の転生者の友人の名前洗いざらい言いなさいよ」
「今度ゆっくりと話をしてやる。マーズベルに戻ったら団子でも食べながら談笑しよう。話せばいっぱいいるからな」
「そんなに?」
「まあ、強いて言えば戦国時代の武将や、江戸時代の人斬りもいたぞ」
想像以上に濃いな――しかもその武将って知っている人かしら? いずれにしてもめちゃくちゃ気になる。
「1つの時代に1人は友人関係になっていると思うぞ。まあ今はそんな事より、できる限りの考察をしようではないか。まず、ここは何処なのか? という事。我等は何故殺されずに済んだのかという事――などなど」
ランベリオンはそう言いながら、私の表情を伺っていた。私に意見を求めているのだろう。或いは同意を求めている。
「まあそうね。殺されずに済んだのは不幸中の幸いだわ。けどそれは単純に人質などのネガティブな事に使われるんだと思うわ」
すると、ランベリオンは私の顔を見て何か思い出したような表情を浮かべた。
「今思うと、ミユキ殿の
「確かにユニークスキルは常に発動しているわ。マーズベルでのんびりと過ごしている時は発動していないけど任務の時は必ずね」
「だとしたらいける! いけるぞ!」
ランベリオンの能天気すぎるポジティブさに私は溜め息をついた。
「このスキルは、表面上では物事をプラスの方向に変えることができる。とステータスには出てくるけど、そう簡単な話ではないのよ」
「と、言うと?」
「確かに
するとランベリオンは目を丸くして驚いていた。
「そうだったのか!?」
「ええ。だって人間は何もしない、行動理念をしっかり持って行動し無ければ何も起きないと思わない?」
「た――確かに――」
「だからね、こういう窮地に陥った時に助けてくれるこのスキルを生かすには、何でもいいから今できる解決策を本気で立案して行動を起こす必要があるのよ。するとこのスキルはプラスの運命に変えてくれるの」
私がそう言ってもランベリオンは「う~ん」と首を傾げていた。
「それならば、ナリユキ殿のように自分を信じ続けて行動をすればプラスの方向に変わっているから、考え方次第であってスキルの恩恵は少ないんじゃないか?」
「確かに今の伝え方だとそうなるわね。でも人間って必ず失敗するじゃない? だって正解が分からないから本気で取り組んでも無理な時は無理。そこに失敗という概念が生まれ、さらに改善を行う事によって過去の失敗が成功体験に変わるのよ。私のスキルはどちらかと言うと筋トレのようなものかしら。筋トレってタンパク質や
するとランベリオンはニッと笑みを浮かべた。
「分かった。一緒に考えよう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます