第286話 謎に包まれた亜人Ⅰ

「ここまで侮辱をされたのは初めてだ。小娘2人。必ず殺してあの生意気な国主にその首を晒してやる」


 アグリオスはそう言って口角を吊り上げていた。俺はコイツは何を言っているんだろうと思ったけど、それを行ってしまうと、ミクちゃんとアリシアが反応できずに大ダメージを負っても困るしな。


「多分それは無いですね」


「私達負けないから」


 アリシア、ミクちゃんの順にそう言うとアグリオスは怒号を散らしながら槍をブン回した。ミクちゃんとアリシアは気のせいか分からんが動きのキレが増していた。


「任せても大丈夫そうだな」


 俺はそう思うと額から血を流しているミーシャ達の所へ向かった。これが亜人あじんか――黒いローブで漆黒の体を包んでいた人間の形をしたナニカ。目には光など宿っていない不気味な種族だ。戦闘値は3,000程。大して強くは無いけどミーシャ達の戦闘値では勝てなくても可笑しくは無かった。寧ろよく耐えてくれたと思う。でも何故だろうなこの胸騒ぎ。ミーシャ達が戦っているこの名前が無い亜人あじんから、異様な雰囲気を感じていた。




■名前:なし

■性別:不明

■種族:亜人あじん

■称号:闇の番人

■勲章:なし

■MP:5,000,000

■強さ又は危険度:A

■念波動戦闘値:3,100


■パッシブスキル

駆ける者Ⅴ:自身の走力を500%アップする

物理攻撃無効Ⅴ:物理攻撃と認識できる攻撃全てを無効にして、ダメージを0として扱う。

熱無効Ⅴ:熱さの影響を体に受けない。

熱変動耐性無効Ⅴ:急激な温度上昇による自身に対するあらゆる影響を無効化する。

洗脳無効Ⅴ:洗脳に関するあらゆる現象が無効となる。

異常聴覚Ⅴ:人族の10,000倍の聴覚を有する

耳栓:人体に及ぼす大きな音が聞こえた際、90%カットする。

痛覚無効Ⅴ:自身を苦しめる痛みを無効化する。


■アクティブスキル

火炎放射フレイム・バースト:口から炎を射出する。

死の領域デス・テリトリー:半径2m以内の生物を自動的に察知することができる。

悪の破壊光アビス・ディストラクション:巨大で邪悪なエネルギー光を放つ。

身体向上アップ・バースト:自身の身体能力を向上させる。尚、所有者の実力によって上昇率は異なる。

死絶デスペリア:エネルギーを集中させてた指を横に描くことで、空間を切り裂くことができる。

魂吸引ドレイン・ソウル:戦意喪失、又は意識不明の生物の魂を吸収し、自身のエネルギーに変換することができる。魂を抜き取られた者は死に至る。


■ユニークスキル:不明


■アルティメットスキル:殺戮の爆風撃ジェノサイド・ブラスト:生物の脈をナノサイズで傷をつける爆風を放つことができる。




 ユニークスキルが不明ってのが気になるんだよな。それにA級なのにS級ばりにパッシブスキルのⅤを揃えているところも気になるし、アクティブスキルの死絶デスペリア魂吸引ドレイン・ソウルに関しては、戦闘値が4,000くらいになったときに、闇属性や死属性を扱うのが得意な人間や魔物が習得できると聞いたが――。


「皆よくやった。後は俺に任せてくれ」


「ナリユキ様!」


 すると、ミーシャと獣人がそう言って振り返った。かたや、亜人あじんについては一言も口を開かない。


「この亜人あじん――他の亜人あじんと比べて不気味なんです。それにユニークスキルが不明と表示されているのです」


「それは俺もだ」


「ナリユキ様もですか!?」


「ああ。鑑定士Ⅵでもそうなっているから何かしらのタネがある。それに戦闘値は3,100とあるが実際にはもっと上のような気がするんだ。ミーシャ達はもしかしたら手を抜かれていたかもしれないな」


「な――何の為に?」


「そこまでは分からん――だからこの俺が相手をしてやる」


 斬撃無効のスキルは付いていないようなので、ミーシャ達は剣を使って戦っていたようだ。しかし、俺の戦法は勿論銃だ。基本的に銃撃無効というスキルを持っている人は未だかつて見たことが無いから一番弱点が少ない戦法とも言える。俺はデザートイーグルを創造主ザ・クリエイターで取り出した。


「試してみようか」


 俺がそう言ってもこの亜人あじんはやはり口を開かない。言語が通じない種族なのか、はたまた鳴くこともできない感情が無い生き物なのか――未知数だ。


 俺が引き金を引くと、発射された銃弾は亜人あじんの体をすり抜けた。


「なっ――!?」


 それに驚くことに俺は亜人あじんの拳を顔面に喰らってしまったのだ。物理攻撃が効くのはアヌビス以来だ。実力差があるのでそれほど痛くはなかったが驚かざるを得なかった。


「ナリユキ様が――!」


「パンチを喰らっている!?」


 と、さっきまで戦闘をしていた獣人達も驚いていた。戦っていた皆には物理攻撃無効のスキルが無かったので攻撃を喰らってしまったのは当然だろうが、まさかこの俺が喰らうとはな。


「ミーシャ。コイツには剣は効くのか?」


「はい――。何撃かは入れましたので。ただ回復力がものすごくて――亜人あじん族の特性なのでしょうか?」


「分からないな。そもそも亜人あじん族なんて珍しいしな」


 俺は創造主ザ・クリエイターでデザートイーグルを消して、刀を取り出した。あまり使い慣れていないけどダメージを負わせることができる戦い方をしないとな。


 そう思っていると次は亜人あじんの身に変化が起きた。真っ黒だった手は一見何の変哲も無い手。亜人あじんというだけあって人間と近い手だった。差別化するのであれば、指が4本で色が真っ黒という事くらいだった。


 しかし、亜人あじんの爪は、刃渡り30cmほどの鋭利な刃物へと変化した。状況によって姿を変えるのはまるでワイズのようだった。


「切れ味が良さそうな鉤爪かぎづめだな」


 俺が刀を構えると亜人あじんは襲い掛かって来た。




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