第269話 来襲Ⅳ

「別に何も考えていないさ」


 俺がそう言うと目を光らせて再び俺に銃を向けてきた。俺は手から剣を出して全ての弾を剣で弾く。


「これならどうだ!」


 マカロフ卿はもう1丁のコルト・パイソンを取り出した。コルト・パイソンの2丁持ちってどこかのミリタリー映画みたいなするの止めろよ。


 俺は放たれる弾丸を見切って剣で捌く。射程距離としては、マカロフ卿に散弾銃を当てることはできるが、効果が薄いのは明白。何とかして近付くことができれば――!


 俺は弾を見極めながらも、身体向上アップ・バーストを発動した。又、パッシブスキルの駆ける者Ⅴで走力は驚異的となる。


 俺は容赦なくマカロフ卿に弾道を見極めながら正面から近付くと――。


小癪こしゃくな!」


 そうマカロフ卿はそう怒号を散らしながら銃を連射していた。12発全ての弾を撃ち終えたようだ。


 俺は剣を捨てて右手を金色に光らせた。マカロフ卿は2丁のコルト・パイソンを地面に捨てて、ホルスターからマカロフを取り出そうとしていた。


「遅い!」


 俺は右手でマカロフ卿を掴もうとした。マカロフ卿は後ろに逃げようと、地面を蹴り上げようとした時、俺は左手で持っているAA-12のトリガーを引いた。


 先程と同じく、AA-12を連射するとマカロフ卿は身体向上アップ・バーストをした後に体を硬質化させた。


 マカロフ卿が俺に射撃をしようとした時、俺はAA-12でマカロフ卿が持つマカロフをAA-12の散弾銃で直撃させた。


「なっ……!?」


「頂くぜ!」


 俺はその隙に、マカロフ卿の頭を右手で掴みながら地面に叩きつけた。地面は割れてしまい、小さなクレーターができた。地面が大きく揺れていたので、戦闘中にも関わらず手を止めていた人間も何人かいたくらいだ。


 俺がこの間に奪った知性と記憶は、マカロフ卿が持つ復讐の時限爆弾リベンジ・タイムボムについてと、誰が俺を犯人に仕立て上げたかだ――。


 やはり俺がやったという情報はコードが流したらしい。そして、メリーザは寝たきりの状態になって死にかけているという情報だった。


 ヴェドラウイルスについては、俺の部下――。つまり、ランベリオンとアマミヤに扮した何者かが、つい数日前に城に訪れたらしい。メリーザの結界を簡単に潜り抜けて、ヴェドラウイルスの細菌が入った瓶を何個も落としていったようだ。


 ローブに身を包んだランベリオンとアマミヤに扮した2人は、兵士達に追いかけられながらも走って逃亡した。たちまち城内にはヴェドラウイルスが蔓延してしまった。ただヴェドラウイルスが入った瓶を落としただけでは、その場で人が倒れることは無い。徐々に徐々に体を浸食していくのだが、これはヴェドラウイルスとスモークを混ぜたものだった。つまり、スモークを撒きながら広範囲にヴェドラウイルスを撒くというものだ。その工夫が成功したのか、メリーザを含めた城内の兵士達はすぐに意識を失ってしまい、数時間後には、発熱、体中に湿疹、そして幻覚や幻惑を見ることとなり非常に苦しんでいた様子だ。


 最悪なのは彼等には治すポーションが無いということだ。


 メリーザ――。


 ふと、俺を助けてくれたときのメリーザの顔を思い浮かべた。そう思うとこの目の前にいる馬鹿を何とか無力化して、メリーザを助けなければという想いに駆り立てられた。


 そして、ランベリオンとアマミヤに扮した人間だ。当然、メリーザが俺を今頃恨んでいる可能性もある――。はたまた俺じゃないと信じている可能性も――。


 いや、待て――。もしかしてメリーザが俺と繋がっている事をコードはどこかのタイミングで知った。そして、ランベリオンとアマミヤに扮した誰かを雇い、Qキューからヴェドラウイルスをくすねて、さぞ俺の命令で襲ったかのように仕向けたのではないだろうか?


 俺がそうあれこれと考えていると――。


「貴様! 何か奪ったな!」


 顔を押さえつけているマカロフ卿がそう話をし出した。


「五月蠅いぞ。この分からず屋!」


 俺はそう言ってマカロフ卿に容赦なくAA-12の散弾銃を至近距離で浴びせた。体からは血が噴き出しており、俺の方が圧倒的に有利だった。


 意識を失いそうになりながらも尚抵抗しようとしてくるマカロフ卿――。


 俺は勢いよくAA-12の銃身でマカロフ卿の顔を思い切り殴った。普通であればこんなの喰らえば顔は変形してしまうが、ただ意識を失わせる物理攻撃に過ぎなかった。


 しかし、体力が大幅に削れているマカロフ卿を気絶させるには丁度良い攻撃でもあった。


「とりあえずマカロフ卿は――と」


 俺が馬乗りになっているマカロフ卿から離れると、アヌビスが俺を見てニッと笑みを浮かべていた。


「ヴェドラウイルスは貴様では無いんだろ?」


「何だよ。戦いに来たんじゃないか?」


「余は貴様がそのような手を下す者には見えなかったのだ。そうだろ?」


「知らねえよ。マカロフ卿から記憶を奪ったから少し状況分かったけど、俺の部下に扮した奴が、ヴェドラウイルスを撒いたらしいな」


「魔眼で貴様の体を透視している限り嘘はついていないようだな。心当たりは無いということで間違いないようだ」


「だから言っているだろ。コードなんだろ? 俺の部下に扮したのは誰か分からないけど」


「そういう事だ。余もあの人間はどうも好かなくてな。と、話をしている場合では無いな。ほら、ワイズが貴様の部下を蹂躙しているぞ?」


 アヌビスはそう言って金色の杖をワイズの方に指した。戦っているのはベリトとレンさんだった。


「お前――動かないのか?」


「余によっては無益な戦いだからな。貴様とは今度違う形で手合わせを願おう」


「――面倒臭いから嫌かな」


「ならここでやるしかないか」


 するとアヌビスは金色の杖を構えたので俺が両手で必死に「タイム!」と叫んだ。


「なんだ?」


「分かったから。今度戦うから!」


「なら良い。勘違いをしているアホ共の目を覚ましてやれ」


 俺はそうアヌビスに謎の鼓舞をされてレンさんとベリトの所へと向かった。

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