第157話 罰Ⅴ

 帝国兵達は圧し潰されて悲惨な姿になっていた。人間はこれほど形が潰れてしまうのかと思うほどだった。どんな顔だったかも検討もつかないほどぐちゃぐちゃになっている。


 そんな死体の山がこのアードルハイム帝国軍の本部基地に周りにあったのだ。情報によると10万人近くがいたらしい。


「これを見るとタテワキさんが悪魔に見えますね」


 と、呟くアマミヤに対して俺は苦笑いしかできなかった。しかし、不思議とこんな凄惨な光景を見ても、背徳感だとか、罪悪感というものは無かった。まあこの死体の山は、アードルハイム帝国を立て直す為の犠牲に過ぎないからだ。


「ナリユキさん大丈夫ですか? 様子を見るのを止めますか?」


 俺がぼ~としていたからだろう。ミクちゃんがそう心配をかけてくれた。


「いや、大丈夫だよ」


「よかった」


 ミクちゃんはそう言って俺の手を握ってきた。


「それにしてもナリユキ殿は、人間も魔物も倒した数なら全世界でも相当な上位になったな」


「カルベリアツリーで魔物は散々倒したからな」


「そうだな」


「アードルハイム皇帝はどうでしょうか?」


 そう口走ったのはフィオナだった。しかし宮殿のなかにいるので、俺達は確認することはできない。宮殿も完全に崩壊しているので、中に入ることできないからな。


「アリス。宮殿の中を覗いてもらってもいいか?」


「でも私、アードルハイム皇帝の顔知らないです――」


 と、申し訳なさそうに言われたので、俺はそうだったと頭を抱えた。


「俺が見たりますやん。その代わり報酬は弾んで下さいね」


「分かったよ」


「おっしゃ!」


 そう言ってレンさんは眼帯を外して魔眼を発動した。果たしてレンさんが見ている光景はどのような光景何だろう。絶対情報量めちゃくちゃ多いよな。


「おった。瓦礫のなかに埋もれて死んでるな。あの後から皇帝に近付いた兵士がおったんやろう。皇帝の周りに数人死んでるわ」


「だ、そうだぞ、フィオナ」


 すると、フィオナの涙から一筋の涙が頬を伝っていた。


「ありがとうございます」


 泣きながら俺にお礼を言ってきたフィオナ。


「私からもお礼を申し上げます。ありがとうございます」


 ベリトもそう言って俺に頭を下げてきた。大量の人間の命を奪ったのに、お礼を言われるのは違和感ではある。


「うちからもお礼言わせてください。ありがとうございます!」


 そう言ってお礼を言ってきたのは、アズサさんだった。


「え? なんで?」


「ほらこっち来て!」


 そう言って現れたのは、獣人の女性だった。歳はアズサさんと同じくらいだろうか。


「私はニアと申します。この度は私を助けて頂きありがとうございます」


「どういう接点?」


「前、組んでいたパーティーの獣人の子なんですけど、ある時ニアの仲間が連れ去られたんですよ。それでニアが住助けに行ったところ、捕まって酷い仕打ちにあってしまったんです」


「成程。それであんなに必死に、行きたい言うていたんやな」


「そうそう。ホンマは自分で何とかしたかったけど、ナリユキさんに全部助けてもらったわ。ホンマにありがとうございます」


「いやいや。俺もベリトとフィオナの為に何とかしたいと思っていたからな。問題ないさ」


 アズサさんとニアは俺がそう言うと頭を下げて別の場所へ移動した。


「ノア。ラングドール達のところへ」


「了解」


 俺達がラングドールのところへ向かうと、人は反乱軍だけではなく、その他大勢がいた。これは紛れもなく、ベリトが洗脳して逃がした市民達だ。勿論、いきなり家を破壊されたのだ。ラングドールに泣きすがる人もいた。ラングドールは皆でもう一度立ち上がりましょうと言っていたので――。


「俺が皆の家を建ててやる。前に住んでいた所より大きな家するから安心してくれ」


 すると、ザワザワとし始めた。本当にそんなことができるのか? などの意見だ。まあそれはそうだろうな。


「本当にいいのですか?」


「俺はそういうスキルを持っているからな。他国の帝都をめちゃくちゃにしたんだ。ちゃんと俺ができる後始末はするさ」


「ありがとうございます」


 そうラングドールに頭を下げられた。


「とりあえず今日は疲れた。日も沈んできたしな」


 もう日は夕方になっていたここまで大暴れしたのはいつぶりだろうか。体全身が重たく感じる。


 今日、一日は俺が建てた簡易的な施設でのんびりしてもらうことになる。まるで病院のような大型の施設をいくつも出したから心底驚いていた。


 何ならここに住みたいと言っている子供達もいたもんだから、困っている夫婦もいたりした。


「本当にありがとうございます。これで娘の願いは叶いました」


 そう言ってきた老人の瞳は輝いているように思えた。名前は――。ストーガ・ロビンソンさんか。


「この方は、ストーカ・ロビンソンさん。私達が大暴れをしたキッカケを作った人かな?」


 そうミクちゃんは微笑みながら言っていた。


「聖女様。本当にありがとうございます」


「カレス・ロビンソンさんの話を聞かされたら放っておけないですもの」


 ミクちゃんがそう言うと両手を合わせて、ありがとうございます。ありがとうございます。と何度もお礼を言っていた。


 そうして、宴をしている人間もいたが、俺とミクちゃんは久しぶりの2人きりの時間を過ごした。当然、お願いされていたキスもちゃんとし、まったりとした時間を過ごして次の日を迎えた。


 ここから数日間。俺達はアードルハイム帝国の帝都復興作業に移った。

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