第137話 突撃Ⅰ
「だが、本当にそれで大丈夫なのか?」
「ああ。不意打ちさえできれば必ず成功する」
「――。分かった。俺達はランベリオンとその少年の指示に従おう」
「助かる」
「アリシアさんがおれば捕まっている人達も解放できるな」
「そうだな。ちょっとだけアリシアのMPが心配だが大丈夫か?」
「ええ。何とかなると思いますよ」
アリシアのMPは50,000,000とマーズベルで一番高い。俺なんかMP9,000,000しかないしな。
「ネオンさん。じゃあとりあえず一旦。収監されていたところまで連れて行ってくれないか?」
「かしこまりました」
「じゃあなランベリオン、ノア。皆を守ってやってくれ」
「ああ。任せておけ」
「今度は失敗しながら大丈夫。帝都抜けたら上空で待機しておくからね!」
「おう!」
するとクリンコフが何か言いたげな表情で近付いてきた。
「どうした?」
「他の国の者にこういうことを頼むのはどうかと思うが、皆を自由にしてやってくれ」
「ああ。任せろ」
俺はそれだけ言ってサムズアップすると、ネオンさんの「行きます」の合図で、
「ここがそうなのか?」
「そうですね」
「マジで何も無いな」
「まあどこもそんなもんですよ」
見た感じだと防音設備は大分整っているようだ。この部屋にたった1つの扉。ここを出ると同じような部屋がズラリと並んでいるのだろう。
「さてあまり時間はない。ネオンさん有難う」
「いえいえ。調査という形だったのに、依頼主であるナリユキ様にお手間とらせてしまい申し訳なく思います」
ネオンさんはそう言って謝罪し続けた。
「それにアリシア様にこのような形でお会いするなど、大変お恥ずかしいです」
「いいのですよ。命は大切にして頂きたいからですね」
「有難うございます」
ネオンさんはそう言って可愛らしくペコリと頭を下げた。
「ネオンちゃん気を付けてな」
「はい! では皆様ご武運を」
ネオンさんはそう言って、
「さて、ここからが本番だ。レンさん魔眼は使えるか?」
「生憎まだ使えないですね」
レンさんはそう申し訳なさそうに首を振った。
よし――。じゃあアイツに連絡だ。
《ベリト。今大丈夫か?》
《はい。しばらく前にアードルハイム帝国軍本部基地の上空に到着しました。勿論、結界も避けて通っております》
《て――。ことはもう1人のベリトなんだな?》
《ええ。不愉快な空気を吸うと少々気に障るようでして》
いや――。それは本当に申し訳ない。
《悪いな。辺りを邪眼の透視能力でミクちゃんとアリスを見つけてほしいんだけど大丈夫か?》
《勿論です。既に捉えております》
流石ベリトさん! 本当に仕事ができる魔族ですこと!
《で、どこにいる?》
《ちょうどナリユキ様達がいる部屋のもう1層下の収監所ですね。その地下にはミク様とアリス様のみしかいません。部屋はたくさんあるようですが、一番奥の突き当りの部屋にミク様とアリス様がいらっしゃいますので、すぐに分かるかと思います》
《分かった。また何かあったら連絡するよ。とりあえず俺達は潜入できたから、手筈通りに動いてくれ。暴れてこい》
《かしこまりました》
そうしてベリトとの念話を終えた。
「どないでした?」
「どうやらここのさらに地下にいるらしいな」
「成程。でも入れるんですかね? ここの地下は全て特殊な仕掛けで入れないんですけど」
「アリシアがいるから問題ない。アリシア」
「はい。少し離れていて下さい」
レンさんは何するねんと言わんばかりの表情を浮かべながら、アリシアから離れた。
アリシアは床に手を向けて目を瞑った。
「
アリシアの掛け声で床にはブラックホールのような大穴が開かれた。俺もアリシアのステータスを見て知っているだけだったから、何気に見るのは初めてだ。
「何でもアリかいな」
「さあ行くぞ。この空間は下に繋がっている」
俺はそのまま床にできた空間へと入り込んだ。着地した場所はひんやりとした空間の通路だった。辺りにはベリトが言っていた通り、たくさんの部屋がいくつもある。
「ナリユキ様、先に行くと危ないですよ」
そう言って降りて来たのはアリシアだった。
「何にも気にしてなかったわ。で、レンさんは?」
すると、レンさんも俺の言葉に反応をしたかのように降りて来た。
「穴入るんちょい戸惑ってたら、ナリユキさん秒で入るもん。信じられへん」
「悪い悪い」
そう会話していると、地下で大きな揺れが生じた。建物全体がまるで動いたような強い衝撃だった。
「何や!」
当然ながらレンさんは慌てている。しかし、俺とアリシアが微動だにしないことから、不思議に思ったのだろう。
「全然慌ててへんですね」
「ああ。これはベリトがアルティメットスキルの
「さらっとめちゃ怖いこと言うやん」
「でもまあ、結界が張られているから威力は半減しているだろうけど、この段階で彼等を倒すのが目的じゃない。あくまで陽動なんだ。さて、ミクちゃん達を助けに行くぞ」
俺がそう走り出すと、アリシアとレンさんが慌てて俺についてきた。
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