第96話 隠し通路Ⅰ

――。あれからどんくらい経つんやろうか。目を開けて体を起こすとノーディルスが起きてた。


「何や早いな」


「アンデッドには痛覚無効があるの忘れたか? 何度でも立ち上がるんだよ」


「成程な。で、何かあるんやろ? ちゃんと説明してくれや」


「そうだな。この2人が起きてからだ」


「そうか? ん? お前何で手枷と足枷取れてねん」


「あれは時間が経てば、スキルが発動できる細工が施されていたからな。今ならもう念話も転移テレポートも何でも使える。それにここは監視されていないようだしな」


「マジで意味分からんやんけ」


「それはあとで話す。とりあえず自分の手枷と足枷外したらどうだ」


「ああ。そうやな」


 そう言われたので、身体向上アップ・バーストを使って力づくで外した。


「しゃあない起こすか」


 俺はアズサの肩をトントンとしながら「起きや」と声をかけた。「ん――」と言ってるんがどこか色っぽい思たんは内緒や。


 しばらく体を揺すってるとアズサは跳び起きて、辺りをキョロキョロとし始めた。


「そうや! うちら捕まって――あれ? 何であんたら手枷と足枷ついてへんの?」


「あとでノーディルスから説明するから、とりあえず身体向上アップ・バーストで外せや」


「わかった」


 アズサはそう言って身体向上アップ・バーストで手枷と足枷を外して自由の身になった。


 そんでアズサにはネオンちゃんを起こさせた後、俺達3人はノーディルスの前に座った。


「よし。説明するぞ。俺達はラングドールから捕まっている人たちを解放する任務が与えられた。この国では騎士団長に剣を向けた時点で、牢にぶち込むことができるから、俺は剣を抜いていかにもそれっぽくした」


「それやったら始めからうちらに言うてたら良かったやん。何でノーディルスだけなん?」


「多分、ノーディルスはアンデッド族で精神作用無効ついとるし、冷静沈着に言った事をこなせると思たんとちゃうか? それに女性陣に言うてなかったんは、リアクションがリアルになるからや。俺達が通って来た通路は全て監視されてるらしいしな。監視する方法がスキルじゃないにしろ、マカロフ卿からくすねた小型の監視カメラとかあっても可笑しくはないから」


「確かにそう言われるとそうですね。まあでも本当に意味が分からなかったです」


「それはそうとレンは何も聞いてなかったんやろ? それは何でなん?」


「単純に人間やからや。パニックにはならへんと思うけど、あんなん見せられたら緊張でヘマする可能性あるしな。人選は素晴らしいと思う。まあ流石帝国軍の騎士団長で、反乱軍の副団長ってだけあるな。でも具体的にはどないするねん。ここから下手に動かれへんやろ。作戦とかはある程度立ててるんか?」


「いや、実は立てていないんだ。と、いうのも2人きりで話した訳じゃないからな。強いて言うなら俺達と反乱軍はぶっちゃけ別々の戦力としておきたいらしい」


「それは何でなん?」


「そこも深くは聞けなかったが、恐らく俺達を最後の切り札として残しているんじゃないか? だから、ラングドールが仮に反乱軍の副団長として、帝国軍に捕らえられて拷問されることはあっても、どういう作戦を立てたのか、心の底から知らないと言える。どうせ作戦を言っても言わなくても殺されるからな」


「まあそれはええけど、えらい投げやりやな。見張りも来るやろ?」


「まあ来るだろう。部屋の扉は閉まっているし普通なら出ることはできない」


「あり? ホンマ?」


 ノーディルスがそう言ったので、確認してみると扉は閉まっていた。


「ホンマやな」


 牢にして綺麗な個室やし俺達以外に誰が入っているんやろう? って感じの部屋や。床も壁も天井も真っ白で無機質な部屋。トイレも洋室のが完備されてるから、決して待遇が悪いわけやない。


「見張りを騙すんはいつも通りでええやろ? ここから出るときは、俺達の今の背丈くらいのアンデッド出して、俺の偽装フェイクでアンデッドの顔を俺達の今の顔に変えたらええ」


「そうだな。あとはこの部屋に本当に何もないのか探すか」


「そうやな」


 俺がそう言うと、アズサもネオンちゃんもこっちを不思議そうに見てきた。


「え? どういうことなん?」


「いや、普通に考えたら隠し扉か何かあるだろって思て」


「普通に考えて何で隠し扉がある発想に至るん?」


「ラングドールが俺達に任務を与えたからな。だからレンは隠し扉の1つや2つあっても可笑しくないと考えているし、それは俺も同意見だ」


 ノーディルスがそうフォローしてくれると、成程って2人は納得してた。そのあとに「頼りになる~」って言われた。なんやろな。ネオンちゃんに言われると鼻が伸びるのに、アズサに言われると何とも思わへん。


 しばらく部屋中を探していると――。


「おっ――」


 そう声を漏らしたんはノーディルスやった。ちょうど入り口とは反対方向の壁を物色していたノーディルスは、壁をグググと押していた。


 すると地下に繋がる隠し通路が出てきた。まあ思ってた通りの展開や。それにしても何でこんなもんがあるんやろうな。不思議過ぎへんか?


「でかしたな!」


「どこに繋がっているんだろうな」


「ちょっと皆で行ってみるか」


 俺がそう言うと皆はうんと頷いてくれたんで、とりあえずノーディルスにアンデッドを召喚させて、偽装フェイクで顔を変えて、来ている鎧は帝国兵と同じモノに見た目を変えた。


 そして、隠し通路に入って行くんやった。

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