第95話 アードルハイム帝国軍基地Ⅱ
「ここの地下は全てスキルによって監視されている。話している内容や行動は全て記録されているのさ。彼等に自由など与えない」
「成程。まさに奴隷ですね」
ノーディルスはそう嘲笑うかのように言うと、アズサとネオンちゃんの視線が背中に突き刺さる。監視されてるいうてんねんから、兵士になりすます為の演技って分からんのかい。
しばらく歩いていると、手枷と足枷をされて、牢の中に閉じ込められている人々が見えてきた。言うてた通り、
女性で歳が40過ぎている人は栄養失調になりかけているほどやせ細っている人がいてる。ご飯もロクに食べさせてもらえへんらしい。歳は中年のはずやのに、言い方は悪いけど、見た目は完全に爺と婆みたいなんもおる。
若い女性は若い女性で固められていて、皆が皆怯えてた。そして、男も同じやった。ただ、違うんは見るに堪えん痛々しい傷があることや。
全身焼きただれている人。片腕、片足が無い人。眼球がくり抜かれている人。とまあ、酷い拷問の数々を受けてきたのが一目で分かるんや。体全身が内出血している人もおったりするけど、そんなんまだ可愛いもんやと個人的に思える程や。
捕らわれている人たちは皆、布を衣服の代わりにしているような薄着やったから、傷が丸見えや。酷いんは傷の処置がちゃんと施されてないことや。包帯も何も巻かれてへんから、いずれは菌が繁殖して死ぬやろう。
ラングドールは「どうだい?」と言わんばかりにこっちを見てきた。
俺が渋い顔をしながら頷くと、「そうだろ?」と悲しい目をしていたんは明白やった。
この地獄のような道が300m程続いた。まあぶっちゃけこんなん見せられたら頭が痛い。ノーディルスはアンデッドって事もあり何とも思ってへんようやったけど、アズサとネオンちゃんの顔色はめちゃくちゃ悪かった。
そらあんな道が300mも続いたら普通の人間は可笑しくなるって。
それに道を歩いてるときは「呪ってやる! 殺す!」って言ってくる血の気が多い人間もおった。その暴れ方はまるで、檻の中に閉じ込められたライオンのようやった。
やっとの思いでこの道を抜けると、次は鉄の扉が並んでる廊下になっていた。
「ここは全部拷問部屋だ。たまに同じ人間とは思えない拷問をしている人がいるから、防音にしているはずなのに声が聞こえるときがある」
「ぎゃあああ! 止めてくれえええええ!」
「ほらこのように。部屋は全て埋まっているなかで、ほんの数人しか聞こえないから、完全では無いにしろよくできていると思うよ」
ラングドールは涼しい顔でそう言ってたけど、瞳には光が宿ってなかった。
どんなえげつない拷問をされとるんやろう――。部屋が全部埋まってるんやったらもっといっぱい聞こえてきてもええはずや。数人しか聞こえへんのが尚不気味や。
そんな道がこれまた300m程続いた。まあ思うわな。どんだけ拷問部屋あるねんて。
そう思っていたら、再度また螺旋階段を下っていく。下り終えると、再びグレムリンみたいな像と、施錠された黒い鉄の扉があった。ラングドールはさっきと同じく、手を向けただけで扉が勝手に開く。
俺達が来たんは、【第5騎士団管轄 特別監視牢】と呼ばれるところやった。
ここも拷問部屋のところなんやろうか? ただただ部屋が奥まで続く空間やった。
そう考え事してたら、ラングドールがある一室の前で立ち止まった。
なんや説明してくれるんかな思ってた矢先――。
「尻尾を出したな裏切者! ここで貴様達を牢にぶちこんでやる!」
ラングドールはそう訳分からん事抜かし始めた。
「ど――どいうことですか?」
狼狽えるネオンちゃんと、咄嗟に剣を向けるノーディルス。
「は? え? 何が起きてんの!?」
と、大声で叫ぶアズサ。
「騎士団長に剣を向けるとはやはり貴様達は裏切者だったようだな!」
ラングドールが怒号を散らしている傍ら、剣を抜いて俺達より一歩前に出たノーディルスが俺の目をじっと見てきた。
ほんのコンマ0.05秒とかそんなノリやけど、俺には凄く長く感じた。こん時の目は慌てるなって意味や。
どういう慌てるな! かは正直分からんかったけど、とりあえず説明は後で聞く事にしよう。
「どういう事か説明してもらえませんか? 私達は何もしておりません!」
「黙れ!」
そう言って俺達は抵抗する真も無く斬りかかられた。落雷のような強い衝撃が俺の全身に走った。手も足も全ての自由が奪われて意識が薄れていく。
ラングドールのスキル効果なんやろうか? 痛いって感覚は確かにあるんやけど、それよりも体が痺れて動かれへん。麻痺みたいな効果や――。
これは抵抗全くできん。
「確保する」
俺達4人はあっという間に確保されてまい、手枷と足枷をされて感覚がある。
マジで意味が分からへん――。
意識がだんだんと朦朧としてくる中、ラングドールは倒れてる俺の顔を覗いて来た。
ラングドールの瞳はどこかさっきのノーディルスと同じような雰囲気に見えた。
「どういうことや……?」
ラングドールはニッと口角を吊り上げると、次はノーディルス、アズサ、ネオンちゃんに、手枷と足枷をしていった。
ラングドールは再度俺に近付いて来て、顔を覗かせる。
「ちょうど1,000だ」
そう言った後、ラングドールは片手を振り上げた。
それが振り下ろされたと同時に俺の意識は無くなった。
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