第25話 二人の女友達とのなんでもない日

 文化祭が近づいてきた。


 男子は準備に忙殺され、遅くまでの居残りが連日続いている。

 特に湊のような、部活にも入ってない上に、バイトもやっていない男子は使い勝手がいいと思われているらしい。


「つか、湊。意外と器用だね」

「俺はなんでも、平均点くらいにはこなせるんだよ」

「ふーん」


 葉月が、どうでもよさそうにつぶやく。


 この日の放課後も、多くのクラスが教室に居残って作業中だ。

 湊のクラスもコスプレ喫茶の開店に向けて、準備を進めている。


 湊は床に座り、当日に教室前に置く立て看板を作成している。

 美術部員がPCでイメージ図を作成してプリントしてくれたので、そのとおりにポップな文字などを書いていけばいい。


「つーか、湊」


 葉月は暇らしく、椅子に座って湊の作業をぼーっと見下ろしている。


「竹久さんが美術部だったよね。女子だけど、戦力になるだろうから手伝ってもらえば?」

「無理だろ。美術部は絵を展示するらしいからな」


「あ、なるほど。文化祭だもんね。文化部は活躍のチャンスだよね」

「クラスの出し物より、部活優先だろ。しゃーない」


「……今度は竹久さんとも友達になるつもり?」

「竹久さんは芸術と心中するって言ってるらしいぞ。俺のつけいる隙はないな」

「あたしも瑠伽も茜も隙だらけで悪かったね」


 つんつんと、葉月は足先で湊の肩をつついてくる。

 ちゃんと上履きを脱いでるところが、芸が細かい。


 足を上げているので、ちらちらとスカートの中が見えてしまいそうだ。

 いや、それどころか――


「おい、葉月……」

「あ、うん」


 湊はちらりとそちらを見てから、葉月に足を下げるように目で合図する。

 葉月は少し恥ずかしそうにしながら、足を下げる。

 

「つーか、葉月。周りに聞かれたらヤバいから、気をつけろよ」

「ハイハイ、わかってるって」


 もちろん、教室では他のクラスメイトたちが熱心に働いている。

 女子も一部は教室での作業を手伝っているが、ほとんどが接客要員だ。

 当日働いてもらうため、作業はほぼ免除されている。


「だいたい、葉月は帰ってもいいんだぞ?」

「んー、そうなんだけど、帰ってもすることないしね」


「研修のほうは大丈夫なのか?」

「大丈夫、大丈夫。今日が本番でもOKだよ」


 バイトで接客経験のある女子数人が、“研修”と称して他の女子たちに当日の接客のやり方を教えている。


「あたしは愛想いいしね。ちょっとくらい失敗したって逆に喜ばれるだろうし」

「自分の武器を心得てやがんな」


 葉月ほどの美少女に接客されたら、それだけで料金分以上に楽しめるだろう。


「俺も葉月に接客してほしいくらいだな」

「はぁー? あんた、あたしにあれだけだっぷりナースコスで楽しませてもらっといて」


「おい……」

 湊は思わず周りを見た。

 二人は他のクラスメイトから離れている上に、みんな作業に熱中している。


「ここに来るお客には、あんなサービスしないんだからね……?♡」

「わ、わかってるって。なんかもう一回、ナースでサービスしてもらいたくなってきたな」


「またナースじゃ面白くなくない? 瑠伽のメイド服借りようかな♡ 丈はともかく、胸が合わないかな」

「瀬里奈に怒られるぞ」


 とはいえ、葉月のメイド服コスはかなり見てみたい。


 あえてロングスカートのメイド服を着てもらって、長いスカートの中に潜り込んだりするのも楽しそうだ。


「いろいろ見せてもらって……ついでに一回、お願いしたいな」

「ば、ばーか。絶対、一回じゃ済まないくせに……」

「だろうな」


 1箱使い切るとはいかなくても、半分くらいは使ってしまいそうだ。

 メイド服葉月には、それくらいの価値は余裕である。


「つか、ここでそんな話してたら、誰にも聞かれなくてもヤバい」

「そ、そっか。湊、興奮しちゃうもんね。えーと、湊のほうは、当日なにすんの? ガードマンじゃないよね?」

「まさか。俺じゃ、圧かけられねぇし」


 接客はクラスの女子たちだが、コスプレJKによからぬことをする客がいないとは限らない。

 イカつい体育会系の男子たちが、教室でガードマンをする予定だ。


「裏方を適当に手伝うよ。ま、葉月たちより暇だな」

「なんか、あたしの予定見たら開場から終了まで、ほとんど出ずっぱりなんだよね……」

「瀬里奈もだな。仕方ない、ウチの看板娘だからな、葉月と瀬里奈は」


「思いっきり客寄せに使われてるね。遊ぶ暇がねぇー」

「ま、頑張れ。みんな期待してるし」


「……湊、自由時間に茜と遊ぶつもり?」

「は? いや、そんな約束はしてねぇけど」


「ふーん、ホントかな? 茜のクラスは手抜きの展示で、暇だって言ってたなあ」

「な、なにを疑ってんだよ」


 まるで、浮気を責められる間男のようだ。

 何度となく確認していることだが、湊と葉月は友達だ。


 もし仮に文化祭当日に茜と遊ぶとしても、責められる筋でもないはずだが……。


「ま、いいけど。あれ、もうできてんのそれ?」

「ああ、とりあえずこんなもんかな。最後の仕上げは竹久さんに手伝ってもらいたいしな」


「ふーん。じゃ、休憩にしよっか。なんか飲み物買いに行こう。みんな、ちょっとコンビニ行ってくるけど、飲み物ほしい人ー? 荷物持ち付きだから遠慮なく!」


 葉月が教室中に響く声で呼びかけた。

 すぐに何人かが飲み物をリクエストし、葉月はスマホに手早くメモっていく。


「こういうの見ると、葉月って陽キャなんだなって思うよなあ」

 湊はつぶやいた。


 自分だったら、こんな風にクラスメイトたちに呼びかけるなどできない。


「これで全部だね。さ、行こうか、荷物持ちくん」

「……友達から降格した感あるな」


 とはいえ、湊も疲れたので甘い飲み物でもほしくなっている。

 葉月も案外、それをわかっていて買い出しを提案したのかもしれない。



「そういや、瀬里奈は見かけなかったな」

 廊下を歩きつつ、湊はぼそりと言った。


「瑠伽は帰ったみたいよ。つーか、女子は少ないし」

「そうだな、最近の瀬里奈は帰り早いよな。ずいぶんと優等生だな」


「元から優等生だけどね、思いっきり。けど、ほら。あたしん家にしょっちゅう泊まったり、門限を延ばしてもらったりで、最近良い子じゃなかったから気をつけてるっぽいよ」

「あんな豪邸に住んでるお嬢様だもんなあ……」


「そのお嬢様にとんでもないお願いして、ヤりまくってるとか、湊はバレたら打ち首だね」

「やめてくれ、マジでそんな気するし」


「けど、瑠伽とはここ4、5日くらいご無沙汰だっけ? こんなに長いこと一回もヤらせてもらってないの、初めてとか?」

「そうかも……キスすらしてないなあ。瀬里奈の口をこんなに楽しめないなんてなあ」


「瑠伽用の箱は元からあんまり減らないから、箱だけ見てもわかんないけどね」

「……瀬里奈は着けなかったり、最後は口がほとんどだからな」


 廊下に人影がないのをいいことに、とんでもない話をしている二人だった。


「文化祭があるから、生徒会の手伝いもねぇし――あ、それで思い出した」

「どうしたん、湊?」


「茜、クラスの出し物は特にやることないから、普通に生徒会の仕事をやってるって言ってたんだよな」

「へぇ、マジでやる気ないね、茜のクラス。生徒会も文化祭の運営手伝ってるはずだから、仕事はあるわけだ」

「そうらしい」


 茜は1週間ほど、葉月家に泊まり続けている。

 ただし、葉月がまださほど親しくない茜と二人きりは困る――という理由で、湊の居候も続行中だ。


 湊は引き続きリビングで、茜は葉月の部屋で寝泊まりしている。


「茜、例の空き教室で仕事してるんだとさ。だから、ちょっと茜のパンツ見せてもらってくる」

「えーっ、コンビニ行くだけなんだからあんまり遅くなると文句言われるよ?」


「すぐ、ちょっとパンツ見せてもらうだけだから」

「もー、今朝だってパンツどころかもっとすんごいトコまでガン見してたくせに」

「それはそれ、だろ。学校で見るのとはまた違うし」


 そう言って、湊は空き教室のほうへ向かった。

 空き教室のドアを開けると、やはり茜がいた。


 お行儀悪く椅子の上で片膝を立てて、机の上のノートPCのキーボードを叩いている。


「あれ、ミナと葉月さん。どうしたの?」

「こいつが、茜のパンツ見たいって」


「……今朝、パンツをじっくり見られた気がするのだけど」

「いや、文化祭の作業で疲れたんで癒やしがほしくて」


「おかしいわね……わたしの感覚が変なのか、あなたたちが常識を捨ててるのか、わからなくなってきたわ」


「でも、もう俺と茜も友達になったわけだし。パンツは見たいだろ」

「まあ、そうかな。茜もむしろ、湊にパンツ見せたいくらいでしょ?」

「そういうわけでもないけれど……」


 茜は無表情ながら、戸惑いを隠しきれないようだ。


 湊も常識を知らないわけではないので、なんとなく戸惑いの理由は察しがつく。


 とはいえ、茜のパンツを見たい衝動は抑えきれない。

 それに、茜に頼んで断られるとも思えないので――


「ちょっとでいいから、見せてほしい。それで充分、疲れも吹き飛ぶしな」

「……ふーん」


 茜はちょっとだけ考えてから、頷いた。


「こんな小さいわたしのパンツが癒やしになるの? まあ、好きなだけ見ていって」


 茜は戸惑いを完全に消してクールに言うと、またキーを叩き始めた。

 湊が何気なくノートPCの画面を覗くと、エクセルが開かれていて、次々と数字が打ち込まれている。


 さらに、今度はスカートの中身を覗く。

 片膝を立てているのでめくらなくても、チラリと見えている。


「あれ、茜もスパッツとかはいてないのか」

「……今日は朝、急いだから。誰かさんが全然放してくれなくて、ギリギリまでヤってたでしょう」

「誰だろうなあ……」


 湊は視線を下げて茜のパンツを覗きつつ、スカートもめくってもっとよく見えるようにする。


 ピンクと白の縞模様のパンツが、ほぼ丸見えになっている。


「やべぇー、茜のパンツってエロい葉月、清楚な瀬里奈と違って、なんか凄くイケないものを見てる感があるんだよな」


「頭の悪い感想をありがとう。わたしが小さいことになにか不満でも?」

「い、いや、そういうわけじゃ。いくら小さくても同い年なんだしな」


 湊は、さらに縞パンをじっと覗いたりしつつ――


「大胆ね……普通、そんなところ簡単には見られないのだけど。特に学校では」

「いや、やっぱ何度見てもドキドキするし。こうやって学校でチラッチラッとめくったりズラして見るのがいいんだよな」

「どんどん頭が悪くなっていくわね」


 茜は呆れつつも、まったく気にせず――だが、少しだけ頬が赤い。

 恥じらいが少しでもあるのが、湊には嬉しい。


「というか、そんなにパンツが見たかったなら、葉月さんのを見ればよかったでしょ?」

「さっき、教室で作業してるときに、ずっと見てたんだよ」


「もうー……こいつ、こっそりラインで“パンツ見せて”とか書いてきてさ。わざわざ、トイレ行ってスパッツ脱いできたんだよ」


「俺が床に座って作業してて、葉月は椅子に座ってたから、スカートの中、よく見えてたんだよな」


「他のヤツに見られたらどうしようってドキドキだったよ、まったく……」

「あなたたち、普段からいろいろプレイしてるのね……」

「プレイって言うな。湊がいろいろ楽しんでるだけだって」


 葉月は顔を赤くして、自分のスカートをめくって、ちらっと見せてきた。

 もちろん湊は、そちらも見逃さない。


 葉月の今日の下着は、ひときわエロい黒のレースだ。


 もしちらりと見られても、スパッツだと思うだろう。

 湊はちらりとでも、他の男に見られたくないが。


「あ、葉月。ちょうどいいから、ここでスパッツはいといたらどうだ?」

「カバンに入れてあるっつーの。ま、そうそうスカートめくれるもんでもないから、見られないよ」

「見ていいのは俺だけだしなあ」


「そ、そうだよ。友達だから、一人だけの男友達だから見せてやってるだけだから――って、こらっ、湊!」

「せっかくだから、葉月もちょっと……」

「わたしにしてることは、ちょっとじゃないわよ……あんっ♡」


 湊は茜のスカートの上から尻を撫で回す。


「やんっ……お尻ぃ……♡ も、もうっ……パンツを見るだけじゃなかったの?」

「さすがに持ち歩いてないし、ヤらせてくれとは言わねぇから」


「あ、当たり前でしょ。さすがにヤってたら時間かかりすぎ……やぁんっ♡」

「やっぱり、なんだかんだで葉月さんが最初の女友達だから、一番楽しそうよね」

「……別に、友達に順位をつける趣味はないぞ、俺」


「そ、そうよ。この何日かは……た、たぶん、茜が一番回数多いし……きゃっ、こらぁ……どこ指を突っ込んで……きゃうっ♡」


 葉月は、びくんびくんと身体を震わせている。


「そうね、回数だけならわたしが一番かも」

「ホント、毎日お世話になっちゃってるよな……」


「セリにヤらせてもらえない分を、幼なじみのわたしが引き受けてる……やんっ、鼻息がくすぐったい……♡」

「別に、茜は瀬里奈の代わりってわけでもないぞ」


 湊は茜のスカートの中から顔を出し、二人を抱き寄せて――


「んっ、ちゅっ♡」

「んんっ……こ、今度はキス? もうっ、なんだかんだでいろいろやりたがるんだから、湊は……ん、ちゅ♡」


 茜の小さな唇をちゅっちゅと吸い、続けて葉月にもキスして舌を絡め合う。


「今朝も、ちょっと寝坊したから、一人一回ずつって言ったのに……あんっ♡ 結局、二人とも二つ使っちゃったしね……」


「わたしは、葉月さんが起きてくる前に、一回……着けずにヤらせてあげて……口にもね……♡」


「こ、こいつ、本当に隙あらばヤらせてもらってるよね!」

「明け方に目が覚めたからさ、そしたらちょうど茜がトイレに起きてきたから、頼んで……」


「わたし、寝ぼけてたのよね。よくわからないうちに、ヤらせてって言われて頷いたら、いつの間にか二回も……す、凄くて……わたしが、もう着けるのも待てなくて……」

「本当に、いろいろやるよね、湊……」


「……やっぱ、瀬里奈にも戦線復帰してもらうべきかな? 二人の負担、大きいか?」

「そ、そんなことはないけど……やんっ♡」


 湊はブレザー越しに、葉月の胸に顔を埋める。


「ふ、二人で独占できてると思えばいいし……茜と一緒なのも新鮮で面白いかも……」

「わたしも……んんっ♡」


 湊は葉月の胸の間で顔をぐりぐり動かしつつ、茜のちっぱいもぐにぐにと揉む。


 さすがに制服越しではこの小さな胸の感触はあまり楽しめないが、茜が恥ずかしそうに声を漏らすのがたまらない。


「あ、そうだわ。あのね、わたし、文化祭が終わったら家に帰るわ」

「えっ、そうなの? 別に、もっといてもいいけど?」

「さすがにあまり長いこと留守にもできないし……その代わり♡」


 ちゅっ、と茜は湊の耳に軽くキスしてきた。


「今度は、わたしの家に来ない? ミナも葉月さんも。それに、セリも呼ぶわ」

「三人でお泊まりか……」


 湊は葉月の胸から顔を離し、二人を同時に抱き寄せる。


「わたしの家も、セリの家と同じくらい大きなお風呂があるわよ。それに……ちょっとしたお楽しみもあるわ」

「な、なんだ、お楽しみって?」


「もちろん、そのときまで秘密♡」

「……茜の家、怖くないのよね?」


「本気でそんなこと気にしてたの? 三人もいれば、なにも怖くないわよ。それに……なにか怖いなんて思う暇もないくらい、ミナが遊んでくれるでしょ?」


「それもそうか……ちゅっ♡」

「そうよ……ちゅ、ちゅっ♡」


 葉月が頷いて湊にキスして、続いて茜も二度キスしてくる。

 さらに、三人で舌を伸ばして同時に絡め合いながら――


 湊の心は、文化祭よりもそのあとのお泊まりに飛んで行ってしまう。

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