第20話 三人目は居場所がない

 引き続き、葉月家――


 夕方になって瀬里奈が帰宅し、湊と葉月は瀬里奈が用意していってくれた夕食を食べ終えた。

 それから、二人でリビングでくつろいでいる。


「ふー……」

 葉月は腹ごなしのために、ストレッチなどやっている。


 湊からすれば、食べてすぐによく動けるものだと感心してしまう。

 もちろんナース服ではなく、派手なピンクのタンクトップに、黒のスパッツという格好だ。

 部屋着というより、運動着らしい。


 タンクトップはおっぱいの谷間もあらわで、スパッツは身体に密着していてお尻の形がよくわかる。


 おっぱいの谷間に顔を埋めたいところだが、がっつきすぎるのも品がないので我慢する。


「にしてもさー、やっぱ瑠伽のご飯美味しいよね」

「生鮭のバター焼き、めっちゃ美味かったな。どんな育ち方したら、あんなものつくれるようになるんだ……」


「ああいうのはインスタントとかコンビニとかじゃ食べられないもんね」

「本当のところを言えば、毎日瀬里奈につくってもらいたいよな」


「そのついでに、瑠伽も食べられるもんね」

「そうそう、やっぱあのほっそい身体がクセになって――だから違うって! いや、マジで瀬里奈のメシは毎日食いたいよ」


「ま、そうだけどね。そういえば湊、カレーかチャーハンをつくるとか言ってなかった?」

「瀬里奈に教わるつもりだったんだけど、なかなか機会がなくてな」


「別に、いつでも教われない?」

「そうだと思うんだけどな」


 湊が教わろうとしても、瀬里奈は「食べたいなら私がつくりますよ」と言うだけだ。

 おかげで、今のところ湊の料理のレパートリーは乏しいままだ。


「瑠伽は、料理を教えるより自分でつくって食べさせたいんだよ」

「そんな理由か? まあ、俺が頑張っても瀬里奈の腕には追いつけないだろうし、食わせてもらえるならそのほうがいいが」


「でも、毎日ってわけにはいかないもんね」

 料理を身につける気は1ミリもなさそうな葉月が、うんうんと頷いている。


「つーか、瑠伽みたいな可愛い子の手料理食えるとか、贅沢すぎ。おまけに湊の場合は、瑠伽も食べちゃってるもんね」

「話戻すなよ……」


「今日もさー、あたしのナース服より瑠伽のメイド服のほうに興奮してなかったか、は」

「うおっ……」

 葉月は、ソファに座っている湊のそこに足をぐりぐりと押しつけてくる。


「お、おい……」

「わっ♡ もうこんなになってんじゃん……踏まれて興奮するとか、湊って変態?」

「し、刺激を与えられたらこうなるってことだろ……」


「ふふーん、瑠伽のメイド服のほうが刺激的だった?」

「まだ続くのかよ、その話」


「だーってさ」

 じーっと、葉月がそこを踏みながら睨んでくる。


「あたしは着けて二回。瑠伽は無しで二回、お口にも二回だったじゃん。でも、葵さんは気づいてるよ。あたしが軽くシャワー浴びてた5分の間に、このをもう一回使ってたでしょ?」

「な、なぜそれを……!」


「三人で何回ヤらせてると思ってんの。雰囲気でわかるっつーの。あっ、でもアレ減ってないってことはもう一回口に?」

「い、いや、なんというか……そのまま?」


「……瑠伽、けっこうすんなりそのままヤらせるよね……そっちの回数はあたしより絶対多いよね。そりゃ湊くんのミナトくんも興奮しまくりですわ」

「ぐわっ……」


 ぐりぐりと、葉月は湊のミナトをさらに踏んでくる。

 特に痛くはないが、気持ちよすぎて暴発しそうになってしまう。


「今度は、あたしがメイド服着てみようかな」

「あ、それはアリだな」


「ば、ばーか。でも、ああいうヒラヒラした服、あたしには似合わなくない?」

「いや、俺はメイド葉月ともヤらせてほしいな……」


「や、やっぱそれか! まー、それが湊の褒め言葉なのはわかってるけどさー」


 葉月はやっと湊のそこを踏んでいた足を外した。

 それから、ぽふっと隣に座って、ちゅっちゅとキスしてくる。


「んっ、ちゅっ……コスプレって興奮するもんなの?」

「そ、そりゃあな……だからウチのクラスもコスプレ喫茶、やるんだろ?」


 湊は葉月を膝に乗せて向き合って抱き合う。

 ちゅっ、ちゅっとさらにキスしながら、押しつけられてくるFカップの感触も楽しむ。


「そ、それじゃあ……泊まり込んでくれてるお礼に、なんか他のコスもしてあげようか? 湊限定で見せてあげる♡」

「うーん、バニーガールとか?」


「マジで性欲と直結した衣装、いきなり提案してきたね。きゃっ、こらぁ♡」


 湊が提案しつつ、タンクトップの胸元を引っ張って、葉月のおっぱいを露出させる。

 たわわなふくらみが半分ほど見え、可愛いピンク乳首もぽろりする。


「もー、さっきあたしと瑠伽であんだけヤりまくっといて……まだおっぱい、揉みたいの?」

「揉みまくりたいなあ」


「……ま、好きに触って揉んでいいよ。その前に、もうちょっとキスね♡」

「ああ……」


 湊は葉月と軽く唇を重ねながら、生のおっぱいに触れる。


「あ、あんっ……♡ そ、そろそろベッド……行こうか? それとも、お風呂先に入っとく……?」


「そうだな……風呂で一回、ベッドで……ちゃんと着けるから、お願いしていいか?」

「もうー♡ あのナースコス、窮屈でちょっと疲れてるから……こ、今度こそ二回までだよ?」


「二回だけか……」


「ガチで残念そうな顔すんなー。しょ、しょうがないなあ。ちゅっ♡」

 葉月は困ったような顔をして、湊にキスをしてから。


「あたしはなんもしないけど、口とか胸とか勝手に使っていいからさ……♡」

「マジか。ああ、葉月は寝てていいから、おっぱい使わせてもらうか」


「ちょ、ちょっとくらいは、あたしがおっぱいで挟んであげよっか……?」


 葉月はそう言いつつ、自分から乳首を湊の顔に押しつけてくる。


「わっ」


 そのとたん、葉月が声を上げた。

 リビングのテーブルに置いていた葉月のスマホが、振動したのだ。


「び、びっくりした。ちょっとごめん」

「ああ」


 葉月はテーブルからスマホを取り上げる。


「あれ、瑠伽からだ」

「電話か? この時間に珍しいな」


「だよね。いつもならラインなのに……っと、出ないと。はいはーい」


 湊は身振りで「席を外そうか?」と伝えたが、葉月は笑って手を振って「いていい」と返事してきた。


 相手が共通の友人同士とはいえ、電話をしているなら話を聞かないようにする気遣いくらいはする。

 もっとも、葉月はあまりそういうことを気にしない。


「ああ、うん。ちょっと湊をイジめてたところ。こいつ、瑠伽のバニーガールコスプレを見たいって」

「そんなこと言って――いや、見たいけど」


 湊は電話の邪魔にならないように小声で突っ込む。

 あの清楚な黒髪美少女には、扇情的なバニーガール姿も似合うだろう。

 本人が思っているほど胸も小さくないので、ぺたーんとはならないはず。


「そうそう、今度あたしらで文化祭のコスとか関係なくさー。ほら、露出度高いのダメだもんね」


 そのとおり、葉月と瀬里奈のスカートは短かったが、あれくらいが限界だった。

 おっぱいの谷間を見せるのもアウトだ。


 湊は、もちろん谷間も、もっと際どいコスプレも見てみたい。

 他の男には見せたくないが、三人だけで見るならむしろ望むところだ。


「うん、うん……え? あ、ああ、そうなんだ?」

「…………?」


 葉月の声のトーンが変わった。

 なにか戸惑っているようにも聞こえる。


「あ、いや、いいよ、いいよ。あたしに相談してくれてよかった。あたしなら、そういう話も慣れてるし」

 葉月が、ちらりと湊のほうを見た。


「うん、湊も大丈夫だと思う。あ、そうじゃなくて、ウチに来て大丈夫だから。えーと……そう、それでいいよ。じゃあ、よろ」

「……なんだったんだ? 瀬里奈が来るのか?」


 葉月が電話を切ったので、湊は質問する。


「まさか、こんな時間に瑠伽は家を出られないでしょ。そんでさ……ちょっと湊に頼みがあるんだけど」

「…………?」


 葉月は、ぱんと手を合わせて湊を上目遣いで見てくる。

 湊はこの上目遣いには弱い。

 なにかトラブルが起きたようだが、断るという選択肢はありえない――



 それから、20分後。

 湊は、マンションから徒歩5分ほどのところのコンビニに着いた。


「こんばんは」

「……こんばんは」


 コンビニ前、ゴミ箱のそばに見慣れた制服の少女が座り込んでいる。

 ちょうどコンビニに入っていった中年サラリーマンが、じろじろとその少女を無遠慮に見ていた。

 どうも、スカートの中に視線が向いていたような気もした。


 あかね沙由香さゆか――

 赤毛っぽい、シャギーの入ったショートカット。

 150センチもなさそうな小さな身体。


 制服のブレザーの下には、派手な黄色のパーカーを着ている。

 湊たちの学校は服装には厳しくないが、生徒会役員でもある彼女がこんな服装でいいのだろうか。


「ちょっと遅かったか?」

「いえ、わたしも今着いたところよ」


「そうか、茜……さん」

「さん、はいらないわ。呼び捨てでいい」


「じゃあ、茜」

「なに、ミナ」

「いきなりあだ名かよ」


 とはいえ、実は湊には馴染みがあるあだ名だ。


 小学校の頃にだいたいそのあだ名で呼ばれていたし、高校の友人も何人かそう呼んでいる。

 おそらく、茜は校内でそのあだ名を耳にしたことがあるのだろう。


「悪いわね、わざわざ迎えに来てもらって」

「それは別にかまわないが……マジなのか?」


「迷惑なら帰るわ」

「あ、待て待て。そういうつもりじゃなくてな。いや、こんなトコで話しててもしゃーねぇな。とりあえず、葉月の家に行こう」


「ミナも、葉月さんと同じマンションなのよね?」

「実はそうなんだよ。でも、他の奴らにバレたらからかわれそうだから――」

「人に言って回る趣味はないわ。この前のセリとのことも、黙ってるでしょ?」

「……その節はどうも」


 湊が、瀬里奈のスカートの中に顔を突っ込んでいた決定的瞬間を茜に目撃されている。

 誰にもバレていないようなので、茜は言いふらしていないらしい。


「じゃあ、悪いけど案内をお願いするわ」

「ああ」


 湊が頷くと、茜は立ち上がった。

 立つと、余計にその小ささがよくわかる。

 下手をすると小学生にも見えそうなほど小柄だ。


 もっとも、茜の場合はその小ささよりも顔のほうに目がいく。

 葉月や瀬里奈とはタイプが違うが、勝るとも劣らない美少女だ。


 クールで素っ気なく、あまり目立つタイプでもないが、校内での人気は密かに高い。

 あまり交友範囲が広くない湊が茜を知っているのも、彼女が際立った美少女だからだ。


「お礼は……セリみたいに、スカートに顔を入れさせてあげればいいの?」

「そ、そんなわけねぇだろ! その件は忘れてくれ!」


「はいはい、でも顔を突っ込みたくなったら言って。わたしもお礼をするくらいの礼儀はわきまえてるから」

「…………」


 お礼としてスカートの中に顔を突っ込んでいい――

 冗談に決まっているが、その提案が礼儀を失していないだろうか。

 湊は、少し頭が痛い。


 明るい陽キャの葉月、清楚でおとなしい瀬里奈。

 茜は彼女たち二人とはまったく違う――強いてカテゴライズするなら小悪魔系だろうか。


「それで――?」

「葉月さんには悪いけどね……本当にいいのかしら」


「それは問題ないとは思うが。瀬里奈から話を聞いてるんだろ?」

「ええ、葉月さんの家は今は家族の方がいないのよね」

「ああ」


 葉月家は、今は母親が長期出張中だ。

 同じ学校の女子を一人泊めるくらいはなんでもない。


 もっとも、茜がいては、さっきお許しをもらった“二回”と、口とおっぱいを好きに使わせてもらう約束は破棄だ。


 とはいえ、湊が家を出る前におっぱいで挟んでもらって一回済ませてきた。


 茜のお迎えが少し遅れてしまうが、それだけはヤっておきたかった。

 今夜、なにも無しでは湊も葉月も我慢できそうになかったからだ。


 慌ただしかったが、葉月おっぱいのふわふわした柔らかさは今夜も最高だった……。

 気持ちよすぎて、あっという間に済んだのは良いのか悪いのか。


「でも、ミナにも悪いと思うわ。わざわざ迎えに来てもらって」

「夜だし、ウチのマンションもわからないんだろ」


 湊はまだ詳しい事情は聞いていないが、茜の道案内くらいは特に問題ない。

 瀬里奈とのスカート事件のこともあるし、茜の機嫌も取っておきたかった。


「それで、茜はその――」

「ええ、


 さらりと、当然のことのように茜は言った。

 葉月との同居に加えて、今は文化祭の準備中。


 バタバタしているところに、さらにトラブルが重なってきたようだ――

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