1月6日(金)晴れ 重森美里の介入その7
冬休み14日目。
本日から塾が始まり、年始の実力テストに向けての学習やプリントが配布される。
「みーちゃん、あけおめ~」
「あけましておめでとう、美里ちゃん」
「年明け前のお出かけ楽しかったね~」
そんな授業が始まる少し前、路ちゃんと重森さんは新年の挨拶を交わしていた。
話には聞いていたけど、去年の間に約束のお出かけはできていたらしい。
年末年始は路ちゃんと結構一緒だった気がするから、路ちゃんもかなりお出かけ三昧だったのかもしれない。
「あっ、産賀くんもあけおめ」
「あけましておめで……普通に呼んだ!?」
「なんで驚くの?」
「いや、今まで普通に呼んでこなかったから……」
「年明け前に産賀くんは一人前の男になったとわかったからね。クリスマスイブもお楽しみだったみたいだし」
重森さんはそう言いながらにやけ笑いを見せるので、僕は路ちゃんの方を見てしまう。
すると、路ちゃんは少し申し訳なさそうに頷いた。
まさか重森さんにも報告していたとは……やっぱり路ちゃんは言いたがる方だったのか。
「でも、これで私も遠慮する必要は無くなったわけだ」
「遠慮って……何の?」
「それは……こういうこと?」
重森さんはそのまま路ちゃんの後ろに行って肩を抱き寄せる。
確か……あすなろ抱きというやつ。
当然ながら僕とやられた本人の路ちゃんは驚く。
「「何やってるの!?」」
「おお、息ピッタリじゃない。仲良しさんだねー」
「だねーじゃないんだけど!?」
「いや、みーちゃんと産賀くんの関係があやふやな間はあんまりちょっかいかけるのもどうかなーと思ってて。でも、付き合い始めたなら、産賀くんも寛大な心で許してくれそうじゃない?」
「許すとは言ってない」
「えー……あとは、パートナーがいる女の子の方がなんか魅力的で触りたくなるんだよね。路ちゃんは元から可愛いけど、今はもっと可愛くなってるし」
「あ……ありがとう」
重森さんから耳元で囁かれた路ちゃんはまんざらでもなさそうな反応をする。
僕はいったい何を見せられているんだ。
「それで産賀くん的には私がこんな風に絡むのはアウト? セーフ?」
「……アウトとは言いづらいよ」
「ふふふ。みーちゃん、ちょっと嫉妬してるよ、あれは」
「ほ、本当に……?」
「し、してない」
「じゃあ……良助くんも今度やってみる?」
「そ、それはその……」
「おお、なかなか積極的。しかし、相手はウブな反応だ」
久しぶりにその弄り方をされたけど、その通りなので反論はしづらかった。
嫉妬とまでは言わないけれど……今のところの僕は重森さんのようなコミュニケーションを取るのにまだ抵抗がある。
でも、いずれは僕だって……いや、なんで同級生の女子との絡みでこんな決意をしているんだ。
許可する感じになってしまったけど、重森さんの動きには注意しようと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます