12月30日(金)晴れ 明莉との冬休みⅡその2

 冬休み7日目。

 両親も先日仕事納めになり、僕も今日は出かける予定がなかったから、家族全員がゆっくりできる日になった。


「なってないけど!?」


 ……忘れていた。明莉は宣言通り月曜から今日までどこにも出かけずしっかり勉強していた。

 だけど、さすがに他3人がこたつで適当に再放送のドラマを見たり、スマホで各々楽しんでいたりすると、集中力が切れてしまったらしい。


「休みに入ったからこそゆっくりできる時間で勉強するのもいいと思うんだけどなぁ」


「うっ……上司が言いそうな台詞だ……」


「こら、明莉。お父さんはいつも頑張ってるんだからお正月くらいゆっくりさせてあげなさい」


「はーい……」


 父さんを巻き込もうとした明莉の企みは母さんによって防がれる。

 となると、残す対象は……


「りょうちゃ~ん」


「わかったわかった。じゃあ……コンビニにスイーツでも買いに行ってくるから、それで頑張って」


「じゃあ、あかりも付いて行く! リフレッシュがてら」


 久々にスイーツでもおごろうと思ったら予想外の提案をされる。

 明莉からすると、とりあえず外に出たかった欲があったのだろう。


 お互いに暖かい恰好をしてから一番近くのコンビニを目指して歩き始める。

 普段あまり車が通らない道にまで車が来るのは、帰省ラッシュの影響だろうか。

 恐らく今日は明日に備えてお店は混んでいることだろう。


「なんか久々だねー りょうちゃんと出かけるの」


「まぁ、今年はお互いに色々忙しかったからな」


「おっ、最近の自慢ですかな?」


「違うよ。僕はそういうキャラじゃない」


「知ってる。何ならりょうちゃんはずっと隠してるまであると思ってた」


「そうかな? どっちかというと……そもそも彼女ができないと思われてそうだけど」


「それはそう」


 明莉は笑いながら容赦のない指摘をする。

 まぁ、妹から言われるなら間違いない。


「でも、なんやかんやあっても今日みたいに2人で出かけられるんだから、あかり達はこの先もずっと変わらないと思うなぁ」


「急にどうしたの?」


「今年の振り返り的な? あかりとしては今年、色々あった変化の年だと思うから」


「確かに。今年度で考えれば受験もあるし」


「もー せっかく今は忘れてたのにー」


「忘れるのはまずいだろう。でも、僕がいない間もがんばってたなら絶対大丈夫だ」


「じゃあ、りょうちゃんの言葉を信じて大晦日とお正月は勉強しません」


「僕を理由にしなくても明日明後日は休んでもいいと思うけどな」


「えっ……今日のりょうちゃん、いつも以上に優しい。これが心の余裕の表れ……?」


「いつも以上って言われてるなら文句は言えないな」


 そんな適当な話をしていると、あっという間にコンビニに到着して、スイーツ選びの時間になった。

 もちろん、今日は父さんと母さんの分も含めて買って帰るつもりだ。


 

 それから家に戻ると、こたつでスイーツを食べながら暫く談笑した。

 お出かけ三昧の冬休みも楽しいけれど、いつも通りの家の冬休みは慣れ親しんだ安心感がある。

 それを実感した一日だった。

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