12月29日(木)晴れ 岸本路子との冬デート

 冬休み6日目。

 本日は午後から路ちゃんと……デートすることになった。

 明日から路ちゃんは用事があって、僕も年始は祖父母の家に行くので、会えるうちに会っておくことになったのだ。

 昨日出かけたばかりなので、どこへ行くべきか迷ったけど、今日はゆっくりしたいということで、路ちゃん行きつけのカフェが集合場所になる。

ゆっくりするなら家でもいいかと思ったけど……さすがに家へ招くのはまだ早いし、路ちゃんの家にお邪魔するのはもっと早い。

何気にちゃんとデートとして誘うのは今日が初めてだし、まずは慣れていかなければ。


「冬休み中に二日連続で出かけるって言ったら、両親に驚かれちゃったわ」


「へ、へぇ。路ちゃんは……付き合い始めたこと、ご両親に言ったの?」


「うん。良助くんは?」


「僕も言ったよ。で……どんな反応だった?」


「その時も驚かれたけれど、お母さんは喜んでいたと思う」


「お、お父さんは……?」


「それが、あんまり反応されなかった気がして……ちゃんと伝わってるとは思うのだけれど」


 路ちゃんは不思議そうな顔で言っているけど、お父さんは恐らくショックだったのだと思われる。

 明莉に彼氏ができたと知った時の父さんのように。


「その……路ちゃんのお父さんってどういう感じの人?」


「……良助くん、もしかしてお父さんに会うつもりなの?」


「い、いや……まぁ、いつかは挨拶するべきだとは思ってる。で、でも、まだ早いのもわかってるから、すぐにというわけでは……」


「ふふっ。そうなんだ……しっかり考えてくれてるんだ」


 路ちゃんの微笑みに僕の緊張は少しだけ解れた。

 付き合った後にどうすべきか調べたところで、出てくる情報は結構バラつきがあるし、本当に正解なのかわからない。

 ただ、路ちゃんが好印象に捉えてくれるなら、言って良かった。


「そ、それは置いといて……用事がある日以外で、冬休み中に行きたいところとかある?」


「それなら……良助くんの家かな」


「ええっ!?」


「正確に言うと、久しぶりに妹さんと顔を会ってみたいの。あっ、受験勉強で忙しいなら冬休み中じゃなくてもいいのだけれど……近いうちに会えたらいいなって」


「な、なるほど。そういう風に伝えておくよ」


「それ以外は……初詣とか」


「元旦に出かけて大丈夫なの?」


「大丈夫だと思うけれど……いざとなったら良助くんに説得して貰おうかな……」


「ぼ、僕が……路ちゃんのお父さんに……?」


「ふふっ。本当は大丈夫だから心配しないで」


 路ちゃんがからかうような対応をしてくるので、僕は内心少し驚く。

 いや、全然不快じゃないし、むしろのちょっと可愛いと思うからいいんだけど……緊張しがちな僕と比べると路ちゃんは心に余裕があるのかもしれない。

 そんな風に年末年始の予定や今年の振り返りをゆったり話しながら時間は過ぎていった。

 昨日、大山さんに言われた通り、初々しいという言葉がよく似合う2人だと、我ながら思った。

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