12月21日(水)曇り 重森美里の介入その6

 イブまで折り返しの水曜日。

 年内の学校や部活は終わりに近づいているけど、塾については正月に入ってからの休みになるので、来週までは通わなければならない。

 でも、今はそれが億劫というわけではなく……


「産賀ボーイ」


 今日も少しばかり思考が溶けていたところに、今週も重森さんの新しい呼び名が響いてくる。

 これだけバリエーションを聞かされると、むしろ感心してきた。


「それはそれとして、ボーイって何」


「男子はいつまでも少年っていうから」


「そこは間違いじゃ無さそうだけど、なんかボーイ呼びされると幼い感じが……というか、ボーイなんて呼び方しないでしょ」


「まぁ、そこまでツッコミを貰うのもセットみたいなものだから。産賀ボーイとは来週を過ぎると暫く会えないだろうし」


「そう言われると……」


「みーちゃん、お疲れ~ 今日も可愛いね」


「あ、ありがとう……美里ちゃん」


 僕が全部言い切る前に重森さんは路ちゃんに絡む対象を移していく。

 先週から始まったお互いの呼び方は月曜から何回か聞いているけど、路ちゃんの方はまだ口に馴染んでないようだ。


「そうだ。みーちゃん、冬休みにどこか遊びに行かない? 私とタイマンが駄目なら亜里沙とか誘ってもいいから」


「わ、わたしは別に2人きりでも大丈夫だよ?」


「やったー じゃあ、予定考えとくね。あっ、何なら今週末の24日もちょっとしたクリスマス会やるんだけど、参加する?」


「え、えっと……その日は用事があって」


「そっかそっか。予定が…………産賀ボーイ」


「えっ、なんで僕!?」


「24日の予定は?」


「……用事はあるけど」


 その返しをすると、重森さんは目を細めて僕を見てくる。

 何だか今週はこんな感じばっかりだ。

 いや、大倉くんや他の男子と話す時にはそれほどクリスマスの話題は出てこないんだけど……


「産賀くん、ボーイって言うのやめるね……」


「ど、どうして?」


「それはもう産賀くんがボーイじゃなくて立派な男になったから……」


「あっ、今普通に呼んで……」


「そんなことよりみーちゃん。さっきの遊ぶ予定だけど……」


 やっとまともに呼ばれたと思ったら、話を逸らされてしまったので、来週会う時にはまた別の呼ばれ方をされていそうだ。

 まぁ、変に追及されなかったので、そこは良かったと思っておこう。

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