11月28日(月)曇り 大倉伴憲との日常その23

 11月も残り3日の月曜日。

 日記では全く触れていなかったけど、世間はサッカーの話題で盛り上がっており、週明けの今日もクラスの何人かはその話をしていた。

 残念ながら今日の内容は批判的なものが多かったけど。


 そして、サッカーといえば男子が冬の体育で取り組むスポーツである。

 僕が日記に体育のことをあまり書かないのは、書けるようなことをほとんどしてないからだけど、この流れに乗って少しだけ記しておこうと思う。


 運動ができない方である僕は必然的にディフェンダーのポジションになっているけど、守るための技術があるわけではない。

 なので、向かってきた相手に当たる時も、他のディフェンダーと団子になって当たっていくだけだった。


「あっ……黒いナンバープレート通った」


「おおー」


 それ以外の時間は前線に上がるわけでもなく、大倉くんを始めとした運動が苦手な同級生達とよそ見し過ぎない程度に話している。

 体育に望む姿勢としてはあまり良くないのだろうけど、前線に出たところでパスを回されても困るし、ディフェンスに穴を開けてカウンターされた時には目も当てられない。


「き、昨日のサッカーもディフェンスの人が色々言われてるらしいよ」


 今日も同じようにディフェンダーだった大倉くんは唐突にそんな話題を振ってくる。


「らしいよね。現実だと一旦ディフェンダーにボール回してから体勢を建て直したりするみたいだし」


「ということは……そ、それができないこっちのチームは縛りプレイを強いられてるってこと……?」


「いっても授業でやるサッカーだから……いや、実際はもっと動けと思われてるんだろうけど」


 中途半端にサッカーの情報が流れてくるせいで、普段は全く気にしないようなことを気にしてしまった。

 そこまで意地悪く考えるクラスメイトはいないと思っているけど、全く思ってないかと言われたらたぶん違うだろう。

 せめて努力する姿勢を見せなければ……


「りょうさーん! ボール行った!」


 その時、ボールを取られまいと後ろに下げられたボールが僕の方に飛んでくる。

 いつもなら追いかけつつも場外に出てくれないかと思っているけど、話した直後だった僕はちょっとだけがんばってみようと思った。

 ボールを追い越せるように少し大股で走り、ボールが着地するより先に胸で受け止める。

 そう、これがトラップというやつで……


「ぐえっ!」


 ……が、現実はそう上手くいかず、胸で受け止める予定だったボールは僕の顔面に直撃した。


「りょうさーん!?」


「大丈夫か~」


 その後、一旦試合が中断されたけど、顔に継続的な痛みが残っている以外は、何の怪我もなかった。

 でも、僕の想像以上にクラスメイトが心配してくれたので、やっぱりサッカーだと大人しくしておいた方がいいと思った。

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