11月5日(土)晴れ 花園華凛との日常その20

 休日午前授業の土曜日。

 昨日の夜から芸能界を揺るがすニュースが流れたことから、特に女子達の話題はそれで持ち切りだった。


ただ、僕が注目すべき話題はそちらではなく……。


「リョウスケ、明日は花月堂でお待ちしています」


 花園さんは念を押すように言う。

 そう、明日は文化祭の前に約束通り、路ちゃんと一緒に花園さんのところの和菓子屋へ行く日だった。

 部長と副部長の打ち上げという体で来るようにと言われていたけど、文化祭からは結構時間が経っているので、気持ち的には普通にお店へ伺う感じだ。

 でも、花園さんの方は何だか気合が入っているようで……僕が気付いていない何かがあるような気がしてしまう。


「うん。今の時期だと何か新商品が出てたりするの?」


「秋の味覚として栗やサツマイモを活かしたスイーツを用意しています。まぁ、芋系は普段からよく使う材料なのですが」


「おお。寒さ的にはお汁粉もいいけど、たまには期間限定スイーツもいいな」


「今から楽しみにしているようで何よりです」


 僕は探りをかけてみようと適当な話を振ってみるけど、花園さんにはさらりと流されてしまう。

 わざわざ今聞かなくても明日になればわかることなんだけど……


「そういえば……文芸部の件はまだ検討中?」


「それは……まだ何とも言えません」


「そっか……」


 何かあるとすれば、花園さんが文芸部に入部を悩んでいることだろうか。

 もしかしたら、明日は僕の方から路ちゃんに切り出すべきなのかもしれない。

 無論、最終的に決めるのは花園さんなんだけど、入部したい気持ちを邪魔するものがあるなら路ちゃんとの会話で何か改善できる可能性はある。

 

 そんな風に色々考えてみたけど、結局、花園さんとは当たり障りのない会話しかできなかった。

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