10月31日(月)晴れ 前進する清水夢愛その3
10月最終日かつハロウィン当日。
僕としては土日の出来事とゲーム内のハロウィン演出のおかげで、もうハロウィンをやり終えた気分だったけど、教室へ行くとお菓子のやり取りが行われていた。
全く準備をしていなかった僕は、色々言われながらも結局はおこぼれを頂いてしまったので、後日何か返さなければいけなくなった。
「良助、トリックオアトリート!」
その返す相手の一人がこんなに日に限って久しぶりに会う清水先輩だった。
早朝の下駄箱前では何の用意もできない。
「すみません……お菓子はないです」
「そうか……じゃあ、いたずらさせて貰う。プランAとプランCのどっちがいい?」
「……プランBはどうしたんですか?」
「プランBはあまりにも凶悪過ぎるから私自身が禁止した」
「なるほど?」
でも、言う時にはAとBでいいような気がする……とは言えなかった。
こんなところで深く悩んでも仕方がないので、僕は……
「じゃあ、最初に思い付いたプランAで」
「わかった。よいしょっと……」
清水先輩は背負っていた鞄を漁って、ある物を取り出す。
それをそのまま僕の口元に張り付けた。
「な、なんですか、これ!?」
「なにって……付け髭だが」
「と言われましても」
「ほら、文化祭の時に面白い恰好してたじゃないか」
「は、はい……」
もう忘れようと思っていた話をまた掘り返される。
だから、僕は渋い顔になりそうだったけど、その後の清水先輩の言葉は意外なものだった。
「あれ、結構似合ってたと思うんだが、何かが足りないと思って。だから、この髭を付けたらもっと面白くなるんじゃないかなと」
「に、似合って……ました?」
「ああ。私は好きだったよ」
「……そうですか」
「ん?」
「いえ……ちょっと嬉しいです」
それは散々微妙と言われてきたこともあったけど……そうか。清水先輩は気に入ってくれてたんだ。
「ハロウィンと言えば仮装だし、この程度のいたずらなら許されるとも思ってな。というわけで、良助。このまま教室まで付けて行って貰おうか」
「はい、わかりました」
「えっ!? そこは嫌がるところじゃ……」
「いえいえ。ちゃんといたずらとして受け止めます」
「そ、そうか?」
「ちなみにプランBとCは何する予定だったんですか?」
「おお、それはな……」
それから朝の少しの時間ではあったけど、清水先輩と雑談した。
僕としては何のしがらみもなく、清水先輩と話せたのも久しぶりな気がして、純粋に楽しかった。
だから、これからも些細なことでいいから、清水先輩に喜んで貰える存在になれたらいいなと思った。
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