10月25日(火)雨 大倉伴憲との日常その21

 2学期中間テスト1日目。

 昨日は妙な気持ちになりながらも塾での自主勉強とテスト対策の授業を受けたので、比較的自信を持って挑めたと思う。


「だ、駄目だったかも……」


 一方、テスト終えてからすぐに後ろの席の大倉くんから絶望の声が聞こえる。


「何が駄目だったの?」


「なんかもう全体的に……」


「そ、そうかぁ。でも、そう言いながら毎回補習にはなってないから大丈夫じゃない?」


「そ、そうなんだけど……そろそろ考え始めなきゃいけない時期だから、このままじゃ不味いかなぁって」


 大倉くんは尚も落ち込みながらそう言う。

 確かに文化祭が終わって年末に向かい始めると、少しずつ進路を考えなければならない時期になってくる。

 僕は去年から今年の夏にかけてまで悩んでいた清水先輩を見ていたけど、今日の時点ではまだ何も考えられていなかった。


「う、産賀くんは塾に行ってる分の手応えがある感じ?」


「まぁ、絶対にそうとは言わないけど、昨日も早めに行って勉強してきたし、ちょっと自信が付いた状態で挑めたかな」


「そうなんだ。や、やっぱりボクも通い始めるべきかな?」


「それは……大倉くん次第かな。塾に通えば必ずテスト結果が良くなるわけじゃないし」


 流れ的には行った方がいいと言いそうになったけど、僕は敢えて厳しめな意見を言う。

 僕は路ちゃんからのお誘いがあって通い始めた身だけど、最終的に行くと決めたのは自分の判断だった。

 だから、安易に言ってしまうと、大倉くんには合わない可能性もあると思ったのだ。


「そ、そうだよね……結局は自分で勉強するのが一番だから……い、今のボクにはその意思が足りないんだと思う」


「でも、そんなに落ち込むことはないよ。今日は初日だし、まだ巻き返せる余地は十分あるから」


「う、うん。そのためには……まずソシャゲのログインを断ち切るか……」


「いや、ログインくらいはいいんじゃないかな」


「で、でも、その流れでスタミナやイベントのバナーが目に入ってくると勿体ない気がして……」


「まさか……昨日もそれで勉強時間が……?」


「さ、30分くらいだけだから……」


 僕が厳しい目線で見ると、大倉くんは急に目を逸らす。

 今日の結果はともかく、僕よりも先を見据えて偉いなぁと一瞬思ったけど……どうやら間違いだったようだ。


「前言撤回。今日から4日間はログイン禁止」


「えっ!? ログインくらいはいいんじゃ……」


「自分で言い出したんだから」


「で、でも、連続ログインボーナスが」


「そうそう、塾に通い始めるとそういうのあんまり気にならなくなるよ」


「さっきはボク次第って言ってたのに!?」


 大倉くんは基本的にいい子ではあるんだけど、こういうちょっとだらしない部分もあるのは良くないところだ。

 自分でも考える時期として意識できているんだから、たまには厳しく言うことも必要だろう。

 その後、大倉くんの泣きの説得によりログインだけはしていいことになったけど……まぁ、僕は信じるしかない。

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