産賀良助の普変なる日常

10月21日（金）晴れ 松永浩太との歓談その7

　本日は文芸部がお休みの金曜日。

　文化祭終わりで腑抜けていたけど、来週の火曜日から中間テストが始まるからだ。

　正直に言うと、今週で通常授業のペースを取り戻しているところだから、完全に身が入るまで時間がかかっている。

　去年の今頃はこんな感じではなかった気がするけど……

「それはまぁ、副部長で色々動いてたから見えない疲れが貯まってたんじゃないの？」

　そう言ってくれたのは同じく部活が休みだった松永だ。

「そうなのかなぁ。確かに疲れてはいたんだけど、そんなに働いたわけでもないし」

「じゃあ、シンプルに体力不足」

「そっちの方が納得してしまう」

「ははっ。でも、茉奈ちゃんも普段着慣れないの着てたから肩こったって言ってたよ」

「……またコスプレの話か」

「お？　何、茉奈ちゃんがめっちゃ似合ってた話する？　実はさー、撮った写真待ち受けにしてるんだよ」

「お、おう」

　松永は嬉しそうに言うけど、僕は反応に困った。

　そういうのは言い方が悪いけどバカップルがしそうなことだし、伊月さんは嫌がりそうな気がする。

「そう言うりょーちゃんは誰が一番似合ってると思ったの？」

「何も言ってないんだけど。みんな似合ってたよ」

「優等生の回答はいいから。ここだけの話ってことで」

「それよりも自分のコスプレに後悔してるところだよ」

「うわ、話題逸らした」

　僕は本気で言っているのに松永は取り合ってくれない。

　でも、それは気にするほどのことでもないという意味かもしれない。

　いや、そういうことにしよう。

「やっぱ文化祭はああいうコスプレあるとテンション上がるよなー」

「そんなに文化祭＝コスプレって印象はなかったけどな。アニメや漫画なら見るけど」

「いや、意外にあるらしいぜ。メイト喫茶とか、それ系のコンセプトカフェ的なヤツ」

「へー」

「というか、そういう狙いがあってコスプレしたんじゃないの？　マジで着たかっただけ？」

「うん。そうだと思う」

「……変わっちまったな、文芸部」

「いい方向の変化だから……」

　毎回恒例ではあるけど、全くテスト前らしくない会話でそのまま帰った。

　まぁ、テストに入ってしまえれば文化祭の熱も冷めてしまうので、今のうちに話しておくのも楽しいものだ。