10月12日(水)曇り 大倉伴憲との日常その20
流れるように折り返しの水曜日。
この日の放課後、僕は大倉くんと共に100円ショップへ向かう。
昨日に問題となった文化祭に向けたちょっとしたコスプレを用意するためだった。
大倉くんに付いて来て貰ったのは、選んだ物を客観的に見て貰うためだ。
少し大きめの100円ショップだったので、パーティーグッズのコーナーもかなり大きめだった。
最初に目線に入ってきたのは……鼻眼鏡だった。
「う、産賀くん、それでいくの?」
「あっ、いや……さすがにこれはないと思ってる」
「でも、実際にどれがいいかと言われると迷うよね。コンセプトがあるわけじゃないし……」
「そこなんだよなぁ。蓋を開けたらハロウィンみたいな空間になってたらどうしよう……」
この10月末にはハロウィンがあることから、パーティーグッズにもカボチャやコウモリといったハロウィン寄りの商品が並んでいた。
みんなこれを選んでしまうと、さすがに文芸部としてはちょっと浮いてしまいそうな気がする。
「と、とりあえず試着というか、合わせてみるのはどうかな? ボクで良ければ判断するから」
「ありがとう。そのために来て貰ったのもあるから……まずはこれ」
僕が手に取ったのは漫才師が付けそうな蝶ネクタイだった。
実際のところ、これがどこで使われるのかはあまり想像できないけど、絶妙な大きさがシュールさを出している。
すると、大倉くんは少し首を傾げて考え始めた。
「ちょっと物足りない気が……あっ。これとかどう?」
大倉くんはこれまた少し大きめの黒い眼鏡を渡してくる。
普通のグラサンと違うのだろうかと思いながら、僕は顔の前に眼鏡を出した。
「う、産賀くん……!」
「えっ、何?」
「これだと思う!」
「ええっ!? 嘘!?」
「なんか司会者みたいな感じで……ほら、このマイクとか持って」
大倉くんが追加でプラスチック製のおもちゃのマイクを渡すので、僕はそれを握った。
それによって完成した姿を見て、大倉くんは「おお……」と感心したような声を出す。
「ほ、本当にこれでいいの……?」
「こ、コスプレっぽい感じになってると思うよ。というか、他があんまりしっくりこない感じがする」
「な、なるほど。でも、一応他の感じも見てくれる?」
それから昨日も思い付いた三角帽子や面白マスクなど色々触ってみたけど、大倉くん的には最初以外はあまり評価が良くなかった。
パリピ感が強すぎると僕には似合わないという理由らしい。
まぁ、その判断をして貰うために呼んだのだから、僕はありがたくその意見を採用させて貰う。
こうして、僕の当日のコーデは司会者のような何かになった。
……大倉くんを疑うわけじゃないけど、これで大丈夫だろうか……?
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