9月21日(水)晴れ 大倉伴憲との日常その19

 涼しいどころか寒いと思ってしまう気温になった水曜日。

 でも、体育祭の練習をするのはちょうど良い気温で、本番もこれくらいの気温が望ましいと思った。


 そして、3・4時間目は僕や大倉くんが関係ない種目や演目の練習時間になったので、去年と同じく掃除しながら暇つぶしすることになった。


「こ、今年の垂れ幕には何が描かれると思う?」


「ふむ。ここまでの流行りといえば……」


 その中で話題はチームごとに作る垂れ幕の話になっていた。


「やっぱり筋肉とかパワーとか?」


「た、確かに体育祭だとぴったりだね。ボクは……海賊旗みたいなやつはどこかやりそうだと思ってる。みんな映画や最近の展開を話題にしてたし」


「あー、垂れ幕映えするから本当にありそう。去年はアニメ・漫画系だと、和風な感じでパロディしてたっけ」


「そうだった気がする。こ、こういう言い方するとあれかもだけど、体育祭でちょっとだけ楽しみにしてるところかも」


 そう言われてみると、垂れ幕に見知ったキャラやそれを意識したイラストが描かれていると、少し心惹かれるものがある。

 まぁ、それで体育祭へのやる気が出ることはないんだけど。


「高校になってからの方が体育祭や文化祭みたいなイベント事でアニメや漫画のキャラを見てる気がする」


「そ、そうかも。意外とみんなオタク心がある……?」


「それか、中学生の時よりみんな心が広くなったのかも。こういうのも体育祭実行委員が決めてるのかなー」


「気付いたら垂れ幕は出来上がってるからね……い、いや、もしかしたらボクらの知らないところでデザインの取り決めがあったにするのかもしれないけど」


「……あり得る。特に僕なんか無関心だから」


 それから、ありもしない被害妄想をしつつ、僕と大倉くんは時々真面目に掃除していた。

 色々言ってはいるけど、体育祭が成立しているのは垂れ幕を作っている人や体育委員が僕の知らないところでがんばったおかげだ。

 個人的な体育祭に対する感情は別として、そんな人たちが体育祭を盛り上げようとしている熱意や努力には敬意を表したい。

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