7月23日(土)晴れ 清水夢愛との夏散歩Ⅱ

 夏休み3日目。この日の僕は長期休み恒例、清水先輩と早朝から散歩に出かける。しかし、2年目の夏休みとなった今回の散歩はそれほど浮かれるわけにもいかない。今年の清水先輩は受験生で、その受験をどうするか悩んでいる真っ最中だ。恐らくこの休みで結論が出なければ清水先輩は望まぬ形でこの先を進まなければならなくなる。

 だから、僕はなるべく清水先輩の話を聞いて、良い結論に繋がるようにしたい。


「良助、今年はお祭り行かないのか? 予定が空いてるなら一緒にどうだ?」


「えっ、マジですか!?」


 などと、意気込んでみたものの、清水先輩は一向にそれを話す様子はなく、僕は僕で流されそうになっていた。去年のお祭りは……清水先輩と桜庭先輩のひと悶着が終わったのと、本田くんの件で桜庭先輩と同行した。

そう考えると、桜庭先輩の方がお祭りに行った方が多いというよくわからない感じになっている。それなら今年は清水先輩と……いや、駄目だ。目前のことを考えるより、もっと先のことを考えなくては。


「それもいいですけど……清水先輩、結局受験についてはどうするんですか?」


「…………」


「拗ねた顔しないでください。僕だってできれば楽しい話がしたいです」


「ま、まぁ、そうだよな……正直何も変わってない。でも、この夏休み中には決めるつもりだ。さすがにお盆は両親もいるからな」


「さすがに……清水先輩のご両親って普段からそんなに家を空けてるんですか? 小さい頃だけじゃなく今でも」


「それは……うん。もちろん、定期的な休みはあるんだが、そういう時はその……しっかり休むとか自分の時間に使って欲しいから」


「なるほど……」


「……良助。この話、今日はここまでにしよう。もう少し考えがまとまってから、話すようにするから」


 清水先輩は少し声を落としてそう言う。これは僕の失敗だ。初日から焦ることはないのに、強引に聞きすぎてしまった。

 でも、清水先輩は……両親に対してかなり遠慮気味に見える。親を思っての遠慮だとはわかるんだけど、なんというか……上手く言葉にできない距離があるように感じる。僕の感でしかないから外れている可能性もあるけど。


「じゃあ、お祭りの話に戻しましょう。えっと……僕で良ければぜひ行きたいです!」


「おお、そうか。小織もこの7月末のお祭りは行きたいと言っていたからみんなで行こう!」


「あー……ですよね」


「ん? どうした?」


「い、いえ、去年も行きましたもんね!」


 冷静に考えたらどうして僕だけ誘われていると思ったのだろう。やっぱり僕は浮かれすぎている。

 けれど、今年は清水先輩のしがらみさえ解決できれば……僕の個人的な悩みも何か進展させられそうな気がする。優先すべきは清水先輩の今後なのは間違いないけど……この夏が最後になってしまうかもしれないのだから。

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