7月5日(火)曇り時々雨 拡散する大山亜里沙その13
期末テスト2日目の火曜日。迫っていた台風は温帯低気圧に変わったようだけど、大雨になる可能性があるから引き続き注意が必要らしい。僕としてはこの1週間でテストが終わって欲しいので、大雨にならないように天気が程々に持ってくれるよう願っている。
そんな今日もテストは問題なく進んでいく中、1時間目終わりの休み時間。今回も出席番号順に戻って隣になっていた大山さんから珍しい話題を振られる。
「ねぇ、うぶクン。問題の出し合いっこしない?」
問題の出し合い。それはテスト前に友達や隣の人よくやるやつだけど、これだけ隣り合っていた大山さんとは一回もやったことがなかった。だからこそ、急な振りに僕は驚く。
「何で……?」
「何でって次のテストに出そうなところ覚えてるか確認したいし。それ以外理由ある?」
「そ、そうか。そうだよね。わかった」
「それじゃあ……このページから出してねー」
僕は大山さんの教科書を受け取ると、自分で重要だと思った単語や線を引いてある箇所について出題を始める。
ただ、そうしながらも頭にはまだ疑問符が浮かんでいた。確かに次のテストは化学だからある程度暗記が必要な科目ではあるけど、今までやらなかったことを急にやるのは何かあったのだろうか。
いや、また僕の考え過ぎか。何かあるにしても今回の化学のテストが少し不安だから、唐突に確認したくなったとか、そんな感じに違いない。
最近は他の人と関わる際、色々気にすべきことが多いけど、大山さんについては余計なことを考えないくらいがちょうどいいのかもしれない。
「おっけ。そろそろ教科書しまってこなきゃ。付き合ってくれてありがとね、うぶクン」
「いやいや、僕も確認できたから」
「なら良かった。うぶクンと勉強しておくと何か安心感あるんだよね。この前の勉強会の時に思ってたケド」
「そ、そうかな?」
「そうだよ。あーあ、これならアタシも1年生の時からうぶクンと一緒に勉強しておけば良かったかも……なんて」
大山さんがほほ笑みながらそう言った瞬間、何故か僕は後ろからの目線を感じる。その方向へ振り向くと、大山さんの後ろの席の路ちゃんが僕のことを何とも言えない目で見ていた。しかし、大山さんの方はそれに全然気付いていない。
「おっと、本当にしまってこなきゃ。次のテストもがんばろうね、うぶクン」
「う、うん。そうだね」
その後の化学テストも大きく外すことはなかったけど、どうしてか僕の心が妙にざわついていた。まぁ、恐らく問題の出し合いっこなんて慣れないことしたせい……だと思いたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます