6月27日(月)晴れ 野島実香との日常その5
ところによっては梅雨明けした月曜日。僕の住む地方ではまだ出ていないけど、今年の梅雨は夕立の回数すら少ないからあまり梅雨らしさを感じずに終わりそうである。
そんな天気とは関係なく今週は期末テスト1週間前だ。来週が丸々テスト期間になることを嘆く声もあれば、これが終われば夏休み一直線だという声も聞こえる。
「それで……産賀くん的にはどこ山張るべきだと思う?」
そう聞いてきたのは隣の席の野島さんだった。今日の授業が終わる度にこの台詞を聞いているので、一応は答えているけど、それに付けたして僕はこう言う。
「何回も言うけど山を張るだけじゃ駄目だと思うよ」
「もちろんしっかり勉強するつもりだけど、聞いておいて損はないじゃない?」
「……正直に言うと、僕は野島さんのこと結構できる人だと思ってた」
「過去形にしないでよ!? 今から本気出すし!」
かなり失礼なことを言っているとわかるけど、なんだかんだ1年生からの付き合いで、ここ最近は隣の席かつ清水先輩のことで話す機会が増えたおかげか、以前よりもそういう弄り方ができるようになっていた。まぁ、普段は弄られる側なので僕が有利になれそうな時くらいは許して貰いたい。
「じゃあ、この時間以降はもう山張るところは聞かないようにしてね」
「そんなぁ。お菓子あげるからそこはなにとぞ……」
「僕に頼らなくても茶道部の先輩方に聞けばテストのコツとか教えて貰えるんじゃないの?」
「いやいや、それはないよ。だって、桜庭先輩に聞くのは本能的に怖さを感じるし、清水先輩に聞いても感覚で答えられそうだし」
「確かに」
「あっ。今の桜庭先輩に報告しておくね」
「や、やめて! 次の時間も教えるから!」
「ふっふっふっ。それでよろしい」
残念ながら僕はこういう駆け引きが下手くそのようだ。話を繋げるためとはいえ、自分の隙になる話題を振ってしまった。
「でも、本当に良かったね。とりあえずは清水先輩の誤解?というか、産賀くんの杞憂が晴れて」
「うん。色々聞いてくれた野島さんのおかげだよ」
「そうでしょう。だから、私には産賀くんが持つ情報を聞く権利があるのだよ」
「そ、そうくるのか。それなら明日勉強会やるんだけど、野島さんも参加してみる?」
「えっ。産賀くんってそういう活動もしてるの?」
「いや、別に僕が教えるわけじゃなくて、みんな集まって勉強するってこと。大山さんとこのクラスの路……岸本さんと花園さん」
「へー……産賀くんってそういうハーレム活動もしてるの?」
「違うってば。たまたまみんな知り合いってだけだよ」
「ふーん。ちょっと考えとく」
そんなわけで野島さんも流れで誘ってしまったわけだけど……傍から見るとハーレムと思われてる可能性もあるのか。確かに路ちゃんと花園さんの3人だった時と比べると男子1人の僕がより浮いてしまう。
今回は路ちゃんが誘ってくれたから参加するけど、今後は周りからの目も気にするべきかもしれない……と僕にしては珍しく自意識過剰なことを考えてしまった。
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