5月12日(木)雨 我が名は

 薄暗い天気が続く木曜日。この日はとても平和な1日であったので……日記に書けるようなことがない。いや、むしろちょっとしたことでも連日書けるような出来事があったのが珍しかったとも言える。


 だからといってこの数行で終わらせるわけにもいかないので、今日は僕の呼ばれ方事情について記しておこうと思う。


 一番呼ばれている「りょーちゃん」は物心ついた頃から呼ばれていたような気がするけど、大抵の男子からそう呼ばれるようになったのは松永の影響が大きいと思う。現に高校でも松永が呼んでいたことで自然に他の男子も呼ぶようになっていた。

 僕としても呼ばれ慣れていることもあって、ニックネームと言われたら「りょーちゃん」と答えるようにしている。


 苗字の「産賀」は大倉くんのような一部の男子やクラスの女子から呼ばれていて、大抵はくん付けだ。

 僕は松永を苗字の呼び捨てにしているけど、僕を苗字で呼び捨てにするのは恐らく先生くらいだと思う。それくらい「りょーちゃん」の浸透率が高いのだ。


 名前の「良助」は家族以外に呼ばれることが少なくて、だからこそ花園さんが最初呼んできた時は驚いたし、路ちゃんに呼ばれて今もちょっと緊張する。

 でも、清水先輩の場合は最初呼ばれた時以外だと違和感があまりなかったから、親を含めて年上の人に呼ばれると違った印象になるのかもしれない。


 そして、大山さんの「うぶクン」のような他のニックネームは付けた本人以外呼んでいないことが多い。

 高校で2年連続同じクラスの横山くんが「りょうさん」と呼んでくれるけど、これはある漫画の主人公の印象が強くて、僕っぽくないと勝手に思っている(呼ばれること自体は嬉しい)。

 文芸部で呼ばれる「ウーブ」も何人かの先輩方は気に入っているけど、後輩に浸透するかは怪しいところだ。


 そんな風に自分の呼ばれ方を振り返ってみると……別に振り返るほどバリエーションがあるわけではなかった。

 でも、「りょーちゃん」と呼んでくれる男子が多いのは少なからず僕に親しみを持って話してくれているのがわかるので、この呼ばれ方が一番多いのは結構嬉しいことだと思っている。


 もちろん、よく話している大倉くんが苗字呼びを続けていても親しみは伝わってくるし、大山さんが言うようにうぶクンも呼ばれ慣れて僕も愛着が湧いてきている。


 結局、どういう呼ばれ方でも気持ちが籠っていればそれでいいのだ……と、基本的に苗字にくん・さん付けでしか呼ばない僕が言うと、言い訳っぽく聞こえるかもしれない。

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