2月21日(月)曇り時々雪 清水夢愛の願望その7

 2月三週目の月曜日。今週末は文芸部の作品締切、来週の3月に入ってからは学期末テストがやって来るので、それらの準備や仕上げをしなければならない週だ。先々週辺りからずっとバレンタインに気を取られていたけど、今日から気を取り直していこうと思う。


 そんな日の放課後。僕が下校していると、この時間帯に会うのが恒例になっている清水先輩の後姿を見つける。清水先輩の家の方向とは全く違うところにいるけど、それ自体は珍しくないので僕は自転車から降りて話しかけることにした。


「清水先輩、お疲れさ――」


「はぁ……」


 清水先輩は大きなため息をついたので、僕は驚いて言葉が続かなかった。それから少し遅れて清水先輩は僕を認識する。


「ああ、良助。どうしたんだ? こんなところで」


「い、いえ。僕は普段の帰り道なので。清水先輩こそどうしたんですか? ため息なんてついて……」


「え。私、ため息ついてた……?」


 冗談ではなく本当に聞いているようだったので、僕は素直に頷く。


「そ、そうか……うーん」


「何かあったのなら話だけでも聞きますよ」


「それはありがたいんだが……この件はもう少し自分で考えてから聞いて貰った方がいい気がするんだ。だから、気持ちだけ受け取っておくよ」


「わ、わかりました……」


 いつもの感じですぐに聞くようにしてしまったけど、今回は勇み足だったようだ。悩み続けると良くないとは思うけど、自分で考える時間が大切なのもわかる。直近まで進路を悩んでいた清水先輩なら尚更その時間はいりそうだ。

 でも、先週は修学旅行であんなにテンションが上がっていたのに、こんな状態になるのはいったい何があったのだろうか。


「それにしても適当に歩いていても良助と会うのはいったい何なんだろうな。学校ならまだわかるが」


「その台詞、そのまま清水先輩に返したいです。今日も特に疑問を抱かなかったですけど、適当に歩いててこっちに来ることがびっくりです」


「もしかしたら、無意識に良助と会おうとしてここへ来てたのかもな」


「えっ!?」


「だって、本当に何も考えてなかったし。だから、良助のことを……なんかおかしなこと言ったか?」


 清水先輩は焦っている僕を見てそう言う。それに対して僕は首を振ることしかいなかった。


 清水先輩が無意識というからには本当に無意識なんだろうけど……突然そういう言い方をされてしまうと、変にドキドキさせられてしまう。というか、最近の僕は清水先輩の発言の受け取り方が良くない方向へ行きがちだ。

 自分自身のことは反省しつつ、清水先輩の件は良い方向へ解決するように願う。

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