2月19日(土)曇り時々雨 明莉との日常その37
曇天の土曜日。特に出かけるわけじゃないけど、ずっと暗い天気が続くと晴れた空が恋しくなる。何なら真冬よりも天気が悪いように感じるのは春が早く来て欲しいと思っているからかもしれない。
「りょーちゃん、あかりはそろそろ花園先輩の和菓子屋さんに行きたいよ」
そんな中、部活帰りの明莉は僕にそんなことを呟く。それを聞いた僕は冗談を言っていると思ってしまった。
「今週あんなにチョコいっぱい食べたのに……?」
「えっ? チョコと和菓子は全然別ものでしょ?」
「そうだけど、甘いものというか、お菓子やおやつ的な意味では変わらないだろう」
「うん。だから?」
その時点で僕の考え方が明莉に通じないのがよくわかった。僕は気分的に暫くはおせんべいみたいな塩気のあるものを口にしたいと思っていたけど、明莉はまだままだイケるようだ。
「いや、なんでもない。それより全部食べ切ったのは凄いな。冷蔵庫いっぱいあった気がしてたけど、いつの間にか無くなってた」
「確かに今年は手作りにしたせいでみんな大きめのチョコになってたけど、量的には大したことなかったよ。もちろん、1日じゃ食べ切れないけど」
「それはそうだ。ところで……女子同士でバレンタインチョコ交換した場合ってホワイトデーはどうするの?」
僕が流れのままそう聞いたのは僕自身がお返しを考えなければいけなかったからだ。今までのバレンタインも明莉に対しては適当にスイーツをおごっていたけど、さすがに今回は全員それで済ませるわけにはいかない。
「ホワイトデーは……あれ? そういえば女子同士だとあんまりお返ししてないかも」
「そうなの?」
「タイミング的に春休み前だから春休みに入ってからみんなでどこか食べに行こうとか、仮に持っていくとしてもバレンタインほど凝ってなかったと思う。というか、小学校の時はそもそもお菓子持ち込めなくてチョコ交換自体も狭い範囲でしかしてなかったし」
「あー、だからこのタイミングで手作りチョコの話が出てきたのか」
「そうそう。りょーちゃん、時々あかりと同年代みたいに話すけど、普通に2個下なんだからね」
そう言われてしまうと、僕はこういうイベント事について明莉に頼り過ぎている気もする。今回はたまたま手助けすることになったけど、それ以外の時に情報ソースとなるのは大抵明莉だ。
「まぁ、男子よりも女子の方が早くオトナになるって言うから仕方ないのかもしれないけど」
「そ、そんなことない……と言い切れないな。僕と松永の会話とか中学からあんまり変わってないし」
「でも、まっちゃんは彼女できてるから……」
「別に彼女できても僕との会話は変わらないから」
「おー これは友人マウント……?」
「何で僕がマウント取る必要があるんだ。まぁ……和菓子屋についてはこの前また食べに来てと言われたし、それこそホワイトデーのお返しで行ってもいいよ」
「えー ホワイトデーでは別件でお願いしたいなー」
「本当によくそれだけ甘いもの食べようと思えるな……」
昨今は女の子が……と言うのは極端な見方になってしまうけど、それでも我が妹については甘いもの好きという法則に当てはまっていると思う。
だから、また情報源として頼ってしまうけど、明莉からホワイトデーについても色々教えて貰えば上手く行きそうだ。その情報量として、どれだけおごる必要があるかわからないけど。
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