1月1日(土)雪のち曇り 明莉との冬休み

 冬休み8日目。昨日は年を越してから就寝したので、僕が起きたのは10時頃だった。同じくらいの時間に起きた明莉と共にお雑煮を食べながらテレビを見ていると、新年らしく芸能人がたくさん集まったバラエティ番組が放送されていた。


 そんな遅めの朝食を終えると、僕と明莉は昨日から引き続きコタツで過ごすことになる。清水先輩と話した時にうちの家族は出不精だと言ったけど、それは新年の初詣も含まれていて、僕が物心ついた頃から一回も行ったことがない。


「……そういえば明莉は友達と初詣行ったりしないの?」


 家族の中では唯一アクティブな明莉も毎年の1月1日は家にいる気がするので、僕はふとそう聞いてみた。すると、明莉はまだ眠そうな顔で答える。


「今ゴロゴロしてるりょうちゃんに言われたくないんだけど」


「いや、別に責めてるわけじゃないよ。明莉は何となくそういう祭りごとに行きそうな気がするから」


「そう? うーん……行く人は結構家族で行くって聞く気がするし、この辺だとあんまり大きな神社ないから行かないのが普通だと思ってた」


「なるほどね。まぁ、聞いておきながら僕も行かないものだと思ってるけど、実際どうなんだろう」


「まっちゃんとか高校の友達は何か言ってなかったの?」


「松永は家族で行くって言ってた。他の友達は……そもそも初詣の話題が出なかったな」


「じゃあ、そんなにきっちり行く人ばっかりじゃないってことだよ。年末年始はゆっくりダラダラしたいもん」


 明莉の言うことには同意するけど、僕や明莉の場合は別に年末年始じゃなくともこの寒い期間はコタツでダラダラしているから絵面としては特に変わりがない。

 かといって、初日の出を見たり、有名な神社に参拝するために前日の深夜から誘われたとしても僕は行くべきか否かを考えてしまうと思う。つまりはこのダラダラする時間は僕らにとっては正しい正月なのだ。


「気になるなら片っ端からLINEで聞いてみたらいいじゃない?」


「もう昨日……じゃなくて今日に入ってから散々LINEしたから暫くは送るのも貰うのもいいかな……」


「りょうちゃん、そんなに疲れるほどメッセージ来たんだ。人徳者だね」


「いや、数が多かったわけじゃなくて返信を考えるのが……」


「ええっ!? まさかいちいち送る人で文章変えてたの!? テンプレあけおめ構文でいいじゃん」


「そ、そりゃあ、テンプレ的な返しをした人もいるけど、今年も会う人には色々考えちゃって」


「そんなの今年会ってから言えばいいのに。前から思ってたけど……りょうちゃんってLINE下手?」


 その明莉の言葉に僕は新年初の心に傷を負った。いや、これからやることはだいたい新年初だからわざわざ付ける必要もないけど、図星過ぎたので思ったよりもダメージを受けてしまった。


「あけおめとスタンプ1個で十分だよ。来年からはそうしよ?」


「もう来年の話か……わ、わかった。今年の目標はLINEが上手くなるにする」


「初めてスマホ使うご老人みたいな目標だけど大丈夫?」


 明莉の指摘に対して僕は「大丈夫じゃない」と返しておいた。でも、下手なのは本当のことなので、プチ目標として掲げてもいいかもしれない。

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