11月23日(火)曇り 男子、三人集まればいつまでも少年
勤労感謝しながら学生の僕たちも休める祝日。この日は僕の家に松永と大倉くんが遊びに来た。松永が最新のパーティーゲームを買ったというのでネット対戦ではなくコントローラーを持ち寄ってやろうということになったのだ。
二人はそれぞれ僕の家に遊びに来ているけど二人同時に来るのは初めてだし、松永が休日も部活に行くことが多いからそもそも学校以外でこうやって集まるのが久しぶりだ。
「おっ、明莉ちゃんいるじゃーん。今日はゲームやるんだけど参加する?」
「あかりも祝日だから当然でしょ。あと、これから出かけるから参加しない」
「えー 明莉ちゃん入ればちょうど4人でいい感じだったのにー」
「だったら、最初からもう一人呼べばいいじゃん」
「いやぁ、そうなんだけど、こんな時に限ってちょうどいい感じにできないもんなんだよ」
来訪早々に明莉と絡む松永。完全に出かける準備を完了していた明莉はそれを少しうっとおしそうにあしらう。
「まぁ、何となくわからなくはないけど……って、まっちゃんに構ってる場合じゃなかった。それじゃあ、りょうちゃん行ってきま……あっ」
「あっ……」
明莉の目線は大人しくしていた大倉くんの方に向き、大倉くんは明莉の呼び方に反応する。
「……行ってきます、お兄ちゃん!」
それをなかったことにして明莉は出かけていった。たぶん松永が来ていたから油断していたんだろう。
「別にどこでもりょーちゃん呼びでもいいと思うけどなぁ。ねぇ、りょーちゃん?」
「僕はそうだけど、時と場所を選ばないと恥ずかしい気持ちはわかるよ」
「で、でも、そう思いながらも未だにそう呼んでるのは……なんかいいね」
「大倉くん……! そうだよね! そういうところが可愛いままというか……」
「りょーちゃん。明莉ちゃん居なくなった瞬間からそんなテンションになるのはちょっと引く」
なぜ引かれる必要があるのか。僕は単に妹の良いところを……というテンションが気持ち悪いのは冷静になるとわかる。
居間のテレビに画面を映し出すと、僕たち3人はとりあえず20ターンのパーティーゲームを楽しみだす。少し前には松永や明莉とこんな風に対戦ゲームをやったけど、少し成長した男子三人が集まるとまた雰囲気が変わってくる。
「ま、松永くん、このミニゲームだけ絶対練習してきてるでしょ!」
「持ち主特権だからいいでしょ! それより他ゲームだと俺より強いクラさんは何なの!?」
プレイ中は喧嘩とまではいかないけど、普段ではあまり出てこない悪い言葉が出てきていた。結構みんな負けず嫌いであることがわかる。
「りょーちゃん、さっきから全然喋ってないけど、本気プレイし過ぎでは?」
「…………」
「……いや、さっきは露骨に狙って悪かったって」
それは僕も例外ではなかった。とはいっても小学生の頃よりは負けることも受け入れられるようになっているから半分は冗談である。逆に言えばもう半分は本気プレイになるけど。
そんな少しばかり少年らしい闘争心を出した中、1回戦を制したのは……
「……さ、最近のNPCって強いんだね」
「俺も家でやった時ボコボコにされた」
「だからふつうにしようって言ったのに」
シンプルに知能やプレイングが良かったNPCだった。僕たちが足の引っ張り合いをしたのもあったけど、大倉くんの言う通り最近のゲームのNPCは進化していると思う。成長していたのは僕たちだけではなかったのだ。
その後は多少チームプレイを意識してみたり、他のゲームに変えてみたりと家でのゲーム三昧を楽しんだ。この前に明莉や原田さんとトランプをした時も思ったけど、すぐ側で相手のリアクションが見えるのは楽しいものだと思った……ただし、見知った男子間だと自分が勝っている時に限る。
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